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約束の日となった。ブレスレットを回収した後、若頭にウィルを引き渡す。
「一週間、ご苦労さん。人質は脱走しなかった?」
「うん、出ていってもちゃんと戻ってきたよ」「へぇー、親父と違ってお利口さんだったんだー?」
「あのクソ親父と一緒にするな」
「それで、ウィルの親父さんから金は回収できたのか?」
俺の話に若頭は首を傾げる。
「ウィル?誰だ、そいつは。コイツの名前は……」
「ヴィーザルッ!!」
言葉を遮るように聞こえた男の声。突然現れ、ウィルを抱きしめた。
え、ちょっと待ってくれ。今、なんて?
……ヴィーザル?
「ヴィーザル、すまないッ!私のせいで……大丈夫かい?」
「クソ親父、テメェ‼」
男に殴りかかろうとするウィル。その手を若頭が止めた。
「おいおい、暴力はよせよ。借金はチャラになったんだ。君の命と引き換えにね」
「……ッ」
一瞬、何が起こったかわからなかった。
気づいた時にはウィルの腹にナイフが刺さっていた。
「くそ、おやじ……」
「すまないッ、すまないッ、許してくれ……ヴィーザル」
ウィルがその場に倒れる。泣きながら謝る男。
腹から血が零れ落ち、地面が真っ赤に染まる。
ウィルが、ウィルが……
いなくなる……?
プツン。
その瞬間、俺は化け物となった。
ウィルを刺した父親を喰い、若頭の腕を引きちぎり喰い殺す。幹部たちが刀やナイフ、拳銃で俺に攻撃するが関係ない。その場にいたウィル以外の人間を喰い殺す。
人間の姿に戻った頃には、屋敷は真っ赤に染まっていた。突如襲った痛みでその場に倒れる。
「ウィル……」
痛みに耐えながら地面を這いつくばり、ウィルに駆け寄る。
「ウィル……」
「……ふはは……すげぇーなぁ……あんなに、ひと、いたのに、ぜーいん、ッ……ころ、しちまった……」「いま、きゅーきゅ、しゃ……よぶ……」
スマホを取り出したいのに、体が動かない。血の気の引いた顔。青白くなって、ウィルの呼吸が浅くなる。
「ウィルッ、ウィルッ!」
「うぃる、じゃねぇ……よ。ヴィ……ザルだ」
「なんで、いわなかったの……じぶんが、ヴィーザルだって」
「いえね、よ……おれ、をくったら、しぬのに……おれをたすけて、くれた……ヒーローを、しなせ、るかよッ」
ウィル、ウィーザルは言った。
俺がまだ生きる価値のないものを選んで人を喰っていた時のこと。
お腹が空き両親に内緒で家を抜け出し、人間を探していた。深夜ともあって静かな住宅街。こんな夜中に出かける人などほとんどいない。
1時間ほど周囲を歩いたけど、人は居らず諦めて帰ろうとした時、あるアパートのごみ収集場から良い匂いがした。
ご飯、食べれる……!
ワクワクしながらゴミを漁ると、いたのは俺と同じくらいの少年。体中に切り傷や打撲があり、とても苦しそうだった。
その姿を見て、俺は食べるよりも助けることを選んだ。
あの時、喰えばよかったのかもしれない。でもできなかった。救いたかったんだ……
俺はいったん家へ帰り、救急箱を持って再度少年の元へ行き手当した。
そして着ていた上着を少年に被せ、そのまま家へと帰ったのだった。
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