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懐かしい感覚
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少しも悪びれないセフィドを目の当たりにし、急激に怒りが込み上げる。
「お前っ……ラヴィになんてことを!」
渾身の力を込めて殴り掛かったのに、虫でも払うように軽くあしらわれてしまった。僕はあっという間にセフィドの腕の中に捕まり、身動きが取れなくなる。
「あぁ、久しぶりの人間……なんて綺麗な少年だろう。これは愛でる甲斐がありそうだ」
耳元で発せられるセフィドの声は、なんだか粘っこく絡みついてくるようで不快だ。
「離せ!」
「嫌だよ。懐かしいなぁ、この感覚。人ってなんでこんなに温かいんだろう。俺はねぇ、セックス用アンドロイドなんだ。ただの性の捌け口さ。トイレと一緒。なのに、不思議なんだよねぇ」
セフィドは僕の頬を両手で包み、強引に視線を合わせる。
「俺自身に性欲なんてないはずなのに、今は人と肌を合わせたくて仕方ない。人が恋しくて恋しくて気が触れそうなんだ。だからキミが、主の代わりになってよ」
お願い、と言うセフィドの声は震えているような気がした。涙なんか流さないはずのアンドロイドが、泣いているように見えるのはなぜだろう。
僕を抱きしめ、確認するように体中を撫でまわす。
「主に比べたら、ずいぶん細い身体だなぁ。髪も柔らかいし、煙草の匂いもしない。あの苦い香り、結構好きなのに」
面影を必死に探すように、セフィドが僕の髪に顔を埋めた。
迷子のようなセフィドが、だんだん不憫に思えてくる。
でも、だからと言ってこれ以上、僕の身体を好きにさせてたまるか。
「セフィド。僕はお前の主の代わりにはなれない」
「どうして? だって同じ人間だろ」
「きっと一緒にいればいる程、僕と主が同じじゃないって、誰よりもお前は気づいてしまう。そうしたら、今よりもっと辛くなるよ」
セフィドが僕から体を離し、キョトンと首をかしげた。
「それじゃあ、俺はもう二度と主に会えないの?」
迷いながらも、僕は残酷な事実を突きつける。
「……そうだよ」
その瞬間、セフィドの金色だった瞳が真っ赤に変わった。アンドロイドが暴走したことを示す警報色だ。
事実を受け入れきれずに回路がオーバーヒートしたのか、首や腕の辺りでパチパチとショートを起こし、小さな火花が散る。
「嘘だ!」
そう叫びながら、セフィドが僕を押し倒した。
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