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誰かが誰かを愛してる②完結~腐二次創作弱虫ペダル金城目線
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ドングリ目は、いつもそばにいてくれる。
寂しい時、つらい時、何かに気圧されそうな時。
抱きしめてもらいたい時もあるし、触れてほしくない時もあるが、ドングリ目は決して読み違えない。
今も俺の病室にいて、本を読んでくれようとしている。
「待てそれ…『ぐりとぐら』だろォ」
「寝る前にはちょうどいいかなと思って」
別の本を示して言う。
「五味太郎の『たべたのだあれ?』もあるぞ。どっちがいい?」
思わずクッションを投げつけると、機敏な動きでかわした。
「ガキ扱いすんなっ」
怒りながらふと思う。
俺、ホントはいくつだっけ?
ここどこだ。
俺誰だ。
別の日。
トイレに行って戻りかけた時、ドングリ目が廊下で看護師と話してるのを見た。
安達っていうかわいい看護師だ。
胸が早鐘のように鳴る。
コクられてるっぽいじゃん。
あ、内容聞こえる。
「どうしても好きなんです…」
うっわああ、モロだあ…
足音を忍ばせて、自分の病室に戻る。
すげえの見ちゃった。
ドングリ目、何て答えたんだろ。
何だろ。
胸痛い…
俺安達ちゃん好きなんだろか…
ややあって、ドングリ目が部屋に戻ってきた。
布団、目のとこまで引き上げて、目のすみでドングリ目を追うが、察しのいいやつは、振り向きもせず言うのだ。
「どした」
「安達ちゃんとつきあうのか?」
俺いったい何聞いてる?
振り向かないドングリは~お茶をいれてくれているのだ~、平静な声で答える。
「おまえがな」
「?」
「安達嬢、おまえが好きだそうだ。次の外出日に一緒に出かけたいそうだ。どうする?」
「どうするって…ヨォ…」
考えるより早く胸のどきどきが早まってく。
やばい俺、ほんとに好きみたいだ。
「動物園でも…いいなら…」
湯呑みを差し出しながら、ドングリ目が微笑む。
「聞いておこう」
動物園は広すぎて、安達ちゃんは途中でネを上げた。
ヨーロッパオオカミの檻の前のベンチに並んで座って、ホットドックを一緒に食ってると、安達ちゃんがクスッと笑った。
「ケチャップついてる」
頬を拭ってくれようとしたのだろう。
けど俺は思わず身を引いた。
引いてからあっとなった。
安達ちゃんもあっとなり、俺たちは二人とも押し黙ったまま、残りのホットドックを食い続けた。
不意に安達ちゃんが、一頭のオオカミ指差した。
「あの子、靖友君に似てるね」
靖友君は…俺のことだ。
「何かやたらひとりでいるけど、視線はいつも仲間を見てる。一緒に行動すればいいのに」
「俺もそうなンかな」
「どうかな。でもってあの大きいのが金城さん。金城さんのそばでぱくぱく餌食べてるのが田所さんかな…やだ。言わないでね」
自分で言って慌ててる安達ちゃんは、文句なく可愛いかったけど、俺の目はいつの間にか、金城よばわりされたオオカミに釘づけになっていた。
確かに金城、ドングリ目の風格ある。
落ち着き払って、いつも冷静で、でも内面アツくて…
金城。
いや、真護。
真…護…
自分で自分の唇に触れる。
いつも優しいキスをくれていたのは。
乱暴な時も優しい時も、同じ愛情を注いでくれていたのは。
あんな目に遭った俺を厭がりもせず、変わらぬ友情と愛情で包んでくれているのは…
「安達ちゃんごめん!」
立ち上がり、前で一礼する俺に、安達ちゃんは優しく笑み、行ってと指先を振る。
やっぱ可愛いと思った。
一般的な意味で。
洋南大寮目指して走る。
そう
そうなのだ。
俺はいつからか、金城真護のものだったのだ。
安達ちゃんといる金城を見て胸が騒いだのは、安達ちゃんへの思いではなく、真護への思いのせいだったのだ。
だがこのデートは、真護が勧めたものだ。
この際だからと真護は、俺を厄介払いしようとしている…?
赤くなったり青くなったりしてる俺を、安達ちゃんはしばらく面白そうに見ていたが、
「しょーがないなあもお。種明かししたげますよ」
安達ちゃんの話は概ねこうだった。
アタシが靖友君好きなのはホント。
でも靖友君が男専(ダンセン)なら、それはそれでいいんです。
きれいな男の子どうしが好きどうしって、女の子には萌えですから。
だから靖友君。
金城さんの気持ちもわかってあげなきゃだめですよ…
俺は走ってく。
やっと自分に戻ったばかりの俺だ。
金城真護のばかやろう。
記憶混濁利用して、俺を試しやがって!
そりゃ俺もあんたとおんなじで、根っからのゲイじゃないけどさ、あんたにはずっとかしづくって決めてんだ、とっくに。
安達ちゃんとうまく行くなら身を引こうとか、カッコつけすぎだろうドングリ!
寮まで走りついた。
金城は二段ベッドの下の段で、何か小難しい本を読んでいる。
(自分は小難しい本で、俺にはぐりとぐらかよ)
気配に気づいて目を上げ、俺に気づいて微笑む。
「安達嬢はどうした。動物園に置き去りか?」
「ちゃんと謝って置いてきた。てめえも謝れドングリ。俺を女に渡そうとしてごめんて。謝れヨ!」
言うそばから、あとからあとから涙があふれてくる。
こんなにも、俺はドングリが好きだ。
ドングリ頭、ドングリ目。
なのに、なのにこのバカは…
「ごめん」
大きな瞳に優しさめいっぱい浮かべて、真護が言う。
俺はその腕の中へ飛び込んでゆく。
愛してる真護。
愛してる。
ずーっと愛してる!
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