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三人三様11 一人~腐二次創作弱虫ペダル福富目線
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ひとりの部屋に帰る。
ついこの間まで三人だった。
今はトーストを食うのも眠るのも一人だ。
出張。
出張はしょうがない。
けどそれに随行する選択。
塔一郎は素早かった。
校閲部も整理部も、記事外注部もかれを欲しがってたのにあっさり捨てた。
俺は今、オフシーズンのニャイアンツの蛇足記事書いてるだけなのに日本にいる。
どっちが新開愛してる?
「銅橋正清って知りあいか?」
「後輩です」
「口説いてくれ。取材嫌いらしい」
資料見てあっとなる。
チームパピヨンでスプリンター?
敢闘賞4回?
銅橋いつの間に…
アポはいがいに簡単にとれた。
渋るマネージャーの横で銅橋が、知らねェ仲じゃねえからよ、ととりなしてる声が聞こえた。
昔より野太くてダミッてる。
アルプスの風にさらされた声‥
新橋の方にある、高級ホテルのロビーで会うことになった。
「よっす先代主将さんよ!」
ふたまわりも大きくなった野獣がそこにいた。
泉田さんとか新開さんとか同じ会社なんだって?
太い二の腕に気後れする。
これが現役の腕。
何か二の句が継げなかった。
そうだ。
言わなくちゃ。
「泉田は会社をやめた。新開は取材で戦地だ」
銅橋は眉根をつと寄せる。
「先手取られたね元主将。泉田さんあれで一途だから。うかうかしてると取られちゃいますよ?」
俺は身を固くした。
取られることなど念頭にない。
ただ三人の和から外れることだけは避けたかった。
肉体的なことではない。
二人は心の友なのだ。
二人が二人きりの結びつきに納まったら俺は…
いかんいかん。
取材で来たのに俺は何を考えてる?
「ドサールルージュを四枚ってことだが、どんなことが苦労だった」
「孤独、かな。フランス人にとってツールは国の誇りだからよ、とけ込むためには戦わなきゃいけねえんだ。勝っても恨まれる、負ければなおさら恨まれる。同じ恨まれンだったら勝った方がマシだからよ…って…聞いてねえだろ福富さん」
「あ? いや聞いてる。何の話だったっけ」
言ってから赤面する。
我ながらお話にならない。
そわそわと目を上げると、銅橋が厳しい目をして俺を見ていた。
「福富さん。あんたどの立場でここ来た。箱学の先輩としてか。MYATのスポーツ記者としてか。どっちだ」
俺には全く答えられない。
俺は全く無自覚にここに来てしまった。
記者としてあるまじきことだ。
「すまん。帰る」
立ち上がろうとする俺の腕を、銅橋は軽く押さえた。
「普段ならぜってえ許さねえけどよ。今日は許すよ。先輩。この十年のこと教えてくれ」
野獣に似合わぬ優しい目で、銅橋は俺を見ている。
気づくと俺はぽつりぽつりと俺たちのことを語り始めていた。
俺と新開のところへ泉田が来たこと。
そのまま三人になったこと。
以来ずっと三人でいること…等々…
聞き終った銅橋はしばらくまじめな顔をしていたが、ふと和み、かすかに自嘲するような調子で話し出した。
「まさにあれが運命の分岐点だったかぁ…。でも先輩。ダシュマはマジヤバイ。パピヨンの二部にいた頃、ダシュマ出身の選手に会ってるんだが、ヤツは切断されてた」
グローブのような手を、自分のその部分の前で横切らせる。
「え」
「宗教的禁忌で男色タブーなんだ。バレたら八割死刑だ。それも石打ち。金払えれば死刑は免れるが、断根と焼き印は必須だ。二人とも覚悟は出来てるんかな」
自分の顔色が、紙のように白くなっていることに気づくのに、たっぷり三分かかった。
「銅橋。またあらためて取材する。今日は帰る!」
そそくさと立ち上がる。
近くの椅子につまづく。
隼人!
塔一郎!
俺は、俺は!!
社屋へ戻ると記者失踪のファクスが入っていた。
当該記者の名は、新開隼人…
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