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散歩
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昼食の時間になってダイニングに呼ばれた時に、ホラーマンからの生暖かい視線に耐え切れず、俺様にしては珍しく早々にご馳走様をして自分の部屋へと引きあげた。
本当はもうちょっと食べたかったけれど、居心地が悪くてしょうがなかったんだ。
ホラーマンめ、覚えてろ。
ベッドに横になってボーッとしていると、頭に浮かんでくるのはホラーマンに言われたあの言葉。
『それは、恋です』
認めたくないけれど、認めざるをえない言葉。
思い出すとまた頬が熱くなってくるのを感じる。
ダメだ!こんな事考えちゃうのが悪いんだ!
頬を冷すように手で頬を包み込んで、頭を振ってその考えを追い出そうとする。
そんな事でどうにかなるとは到底思えないけれど、やらずにはいられない。
そうだ、外に出て頭を冷そう。
ついでに次のメカの題材なんかも見つけてくれば一石二鳥だ。俺様頭いい。
そうと決まれば早く行こうと、バイキンUFOに乗り込んで適当に散歩に出掛ける事にした。
しばらくふらふらと気ままに飛んでいても、特に目新しい物は見つからない。
あれはやったし、それもやったし。
おっ、キツツキだ。そういえばキツツキのメカはまだ作った事なかったな。
何かいい案を思いつけば良いけれど…、まあメモしておこう。
そんな事をしていると、視界の端に見馴れた赤いスーツが写った。
思わずそっちを振り向くと、やっぱりそれは間違いなくアンパンマンだった。
ああ、そうか。もう俺様の面倒を見なくていいからパトロールしてるのか。
パトロールをして空を飛んでいるアンパンマンを見るのは久しぶりで、いつの間にか目で追ってしまっていた。
アンパンマンは下を見ながら、困っている人が居ないか探しているから、俺様の方を見る心配はない。
俺様がアンパンマンを見ているのに、アンパンマンはこっちを向かない。
……こっち、向かないかな。
一瞬そんな事を考えて、すぐにはっと我にかえった。
何を考えているんだ俺様は!
いつもだったらこんなのイタズラの絶好のチャンスじゃないか。
後ろからアンパンマンに近づいて奇襲を仕掛けることだって出来るのに。
何で、何でこんな。
両手で抱える様に頭をかいて、もうどっかに行ったかとアンパンマンの居た方を見ると、居なくなっているなんて事はなくて、むしろ空中で立ち止まってこっちを見ていた。
目が、合った。
その途端にぞわりと鳥肌が立った。
全部見透かされているような気がした。
アンパンマンを見ていた事も、こっちを向いて欲しいと思った事も、俺様がアンパンマンを好きな事も、全部。
「あ、あ…」
口から意味を持たない言葉が漏れる。
口の中の水分が一気になくなって、代わりに目頭が熱を持ち始めた。
恥ずかしい。
この気持ちがバレてしまう事が恥ずかしい。
アンパンマンから逸らせなくなっていた目は、こっちに来ようとしたのか少しアンパンマンが動いたのを確認すると、すぐに使えなくなっていた脳を揺り起こした。
弾かれた様にバイキンUFOを最高時速で突き動かしてバイキン城へと逃げ帰る。
後ろでアンパンマンがどうしているかなんて見ている暇もない。
とにかく必死になって自分の部屋のベッドに倒れこんで、頭を冷やすどころか茹でだこのようになって悶え打っていた。
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