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イイトコ
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蓮と仲直りしてからなんだかんだもうすぐ1週間。
まさに平和な日々を送ってる俺です。
…が!
乾燥機に飛び込みたい!!
そんな危険なことを考えてしまうほど、肌にまとわりついてくるこの空気に心の底からうんざりとしていた。
今は昼休みで、俺とマコトは今日も屋上にお邪魔してる。
もうじき雨が降りそうなどんよりとした空を見上げて、梅雨特有のジメジメ感に小さく息を吐き出した。
夏になったらなったで嫌だけど、今の気持ち悪い暑さよりかは幾分かましだろう。
早いとこ梅雨明けしてほしい。
…なんて心から願ってみた。
「稜太」
食べ終えた弁当箱を片していたら不意に横から聞こえてくる心地よい低音。
その声に視線を上げれば俺をのぞき込む壱也さんと目が合った。
「何ですか?壱也さん」
「今からちょっと付き合ってほしいとこあんだけど」
「?どこ行くんですか?」
「いーとこ」
「えっ」
そう言って意味あり気な笑みを浮かべた壱也さんに一瞬で頬が熱くなる。
未だに免疫がつかないそのイケメンオーラに情けないほどドキドキしている心臓を宥める。
けど返す言葉は決まってる。
「…い、きます」
「ん」
俺の返事を聞いて今度は柔らかい表情を作る壱也さんに心臓を撃ち抜かれた気分だった。
おまけに頭も優しく撫でられてキュンキュンし過ぎて心臓がおかしくなりそうだ。
「フジ、俺ら少し抜けるわ」
「ん、わかった」
立ち上がった壱也さんはフジさんに簡単に声をかけた。
俺も弁当箱片手に立ち上がるとマコトがちょいちょいって俺を呼ぶ。
素直に寄って行けばなぜかマコトはこそこそと小声だった。
「後でどこ行ったか教えろよ」
「え、いいけど何で?」
「だってイイトコなんだろ?ナニすんのか気になるじゃん」
「へ?何って…」
マコトの顔を見ればその綺麗な顔を見事に崩してなぜかニヤニヤしてる。
含みのあるそのニヤけ顔でマコトが何を言いたいのかうっすらとわかってしまった。
「ナニってナニだろ」
やっぱり…!!コイツ絶対変なこと考えてる!!
思いっきり赤面すれば更に楽しそうな表情になるマコト。
思わず冷ややかな視線を送る俺だけど当の本人は全く気にしてない。
もうほんとやだこの人。
「…変な想像するのやめてくれませんかね」
「だって気になるじゃん」
「そんなん知らないよ!もう!行ってきますっ!!」
「えーケチケチすんなよー」
若干不満そうなマコトを放置して壱也さんの横に逃げ込んだ。
マコトってば顔に似合わずものすごい発言してくるからほんと困る。
「どうした?」
「なっ何でもないですっ…」
無駄に赤面してる俺を壱也さんが不思議そうにのぞき込む。
もちろんマコトに言われたことなんか言えるわけがない。
とりあえず笑って誤魔化して早く行きましょう!とグイグイ壱也さんの背を押して早々に屋上を出たのだった。
どこに行くんだろうと思ってたら、壱也さんに連れて来られたのは特別教室棟の端にある空き教室らしき一室だった。
中に入ると締め切られたカーテンのせいでうっすらと暗く、端っこに置かれた書庫と所々に山積みになってる資料が目に入った。
「ここ、前は実習用に使われてたらしいけど、今は古い資料とか置いてあるだけで使われてねぇんだよ」
「そうなんですか」
へえ~って言いながら物珍しくて見回してたけど、ふと恐ろしい考えにたどり着く。
「い、壱也さんっ!こっここ不良の方々の溜まり場になってたりするんじゃ…!」
「…ふはっ…、」
俺の焦り具合が可笑しかったのか何なのか。壱也さんが吹き出した。
いや、だって校舎の端っこで先生とかも使ってないならそうなってもおかしくないじゃん?!
いきなり入って来られてもやだし、そりゃ心配にだってなりますよ!
むうって膨れれば壱也さんが俺の頭に手を置いた。
ぽんぽんと撫でられて壱也さんを見上げれば、笑いを堪えてるのがはっきりわかった。
「大丈夫だろ、誰も来ねえって」
「…ほんとですか?」
「ああ、ここに来んの俺くらいだし」
「はあ…」
「それに俺がここの鍵持ってるし」
「えっ!」
「入りたくても入れねえよ」
「なるほど…」
そう言えば壱也さん鍵使ってここの扉開けてたな。
あまりにも自然な仕草に疑問さえ抱かなかった。
納得してる俺を見て壱也さんがクスクスと笑う。
前から思ってたけどほんと壱也さんの笑いのツボがわからない。
俺ってそんなに面白いのか…
怪訝な顔で壱也さんを見上げれば、やっぱり少し笑いながら壱也さんは俺の頭をクシャクシャと撫でた。
ほんと壱也さんってずるい。
優しい手つきと俺に向けられる表情に、単純な俺は面白くても何でもいいやとか思ってしまう。
「…俺ってそんなに面白いですか?」
「そうだな、面白いっつうか…可愛い」
「っ!!」
言葉と一緒に不意に額に落とされたキスに一気に頬が熱くなる。
更にそのまま抱きすくめられて全身茹で上がってしまいそうだ。
「い、いちやさんっ?」
「ほんっとお前いちいち可愛すぎ…」
「!!」
ギューって壱也さんの腕に力がこもる。
ぴったりと隙間なくくっ付いた身体。
バクバクと鳴り響く心臓の音が壱也さんにまで伝わってしまいそうだ。
絞り出すように壱也さんが大きく吐き出した息が俺の耳を掠めてビクリと肩が揺れる。
「んっ…」
反射と言えど、思わず漏れた鼻にかかったような自分の声に恥ずかしさが込み上がった。
「…んな可愛い反応してっと抑え効かなくなるだろ」
「え、ンっ…」
壱也さんの腕がふっと緩んだかと思うとすかさず塞がれた唇にさっき感じた恥ずかしさなんかどこかへ飛んで行ってしまった。
ていうよりも頭が追いついてってなくて思考停止したって言うのが正しいかもしれない。
「稜太…」
「…んっ、んんっ…」
唇の間に差し込まれた舌が口内をくすぐるように愛撫していく。
頬に添えられた壱也さんの手も、触れ合う舌先も熱くて何も考えられなくなっていた。
「…っ…ふ、んンっ…」
勝手にこぼれていく吐息混じりの自分の声と深く重なり合った唇の隙間からヤラシク漏れる水音が耳の奥に響いてくる。
絡め取られた舌を緩く吸い上げられてゾクゾクとした気持ち良さが背筋を這い上がってきた。
情けないかな、その瞬間必死に踏ん張っていた膝から力が抜け落ちる。
「…っと、大丈夫か?」
「…っ、は、い…」
崩れ落ちそうになった俺を抱きとめた壱也さんが少し申し訳なさそうな顔を見せた。
それからギュって抱きしめられる。
「悪い、学校ってこと忘れてた」
「…だ、ぃじょぶ、です…」
乱れた息を整えながらギュって壱也さんにしがみつく。
壱也さんの体温といつもより少し早い壱也さんの鼓動がなんだかとても安心した。
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