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最悪な出会い
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晴山涼太(はるやまりょうた)、27歳。
今朝、上司から転勤を言い渡され、今しがた大阪に着いた所だ。
いきなりの転勤で直ぐに入れる部屋もなく、ビジネスホテルに予約を入れようにも地名や駅名など全く分からず、会社が何処にあるかさえも分からない。
右も左も分からない土地に降り立ち、俺は不安に押し潰されそうになっていた。
「くそ、誰か迎えくらいよこせよ」
鞄から携帯を取り出し、誰かから連絡がないか確認してみる。
だが、着信履歴もないし、メールさえ来てはいない。
「あー、帰りてぇ」
こんな駅のホームで突っ立ってても仕方がない。
取り敢えず、ここから移動しよう。
適当に歩いて適当にエスカレーターを降り、改札があったから通ってみた。
歩道橋らしきものがあったからそれも渡ってみる。
何か沢山の線があるな。地下鉄に阪急?ややこしいなここ。俺が降りたのはなんだったっけか。
何だか余計に迷っている気がする。
いや、迷っているのかすら分からないんだけども。
「あ、タクシー乗ればいいんじゃん!」
目の前にタクシーが通って思い出した。
忘れていた。ビルの住所が書かれている紙を渡されていた事を。
大きな駅だからかタクシーが山ほど止まっている。
空いているタクシーを見つけると運転手のおっさんに手を振ってみた。
車内から出てきたおっさんに荷物を乗せてもらい、助手席のドアを開けてくれたのでそこに座る。
「どこ行きましょう?」
「あ、えーと、ここに」
朝上司に渡された紙をおっさんに見せてみる。
おっさんは住所を見て直ぐにわかったのか、車が発進した。
流れる街を窓から眺めてみる。
凄い人だな。
確かここは梅田だっけ。串カツが美味しいとか、テレビで見た事がある。
「兄ちゃん着いたで」
10分程走った所で、高層ビルの前でタクシーが止まった。
すげぇわ。高いビルだな。何階あるんだろうか。
「はい、お金」
「はい、お釣り。またよろしゅうな」
「ありがとうございました」
タクシーを降りて鞄から会社の名札を出し、深呼吸を何度か繰り返して中に入った。
俺が務めていた所よりもロビーは広く、受付のお姉さんも超美人。
俺んとこおばちゃんばっかだったもんな。
転勤なんて最悪だと思っていたけれど、毎日美人が拝めると思うとそんなのどうでもよくなってきた。
「あの、晴山涼太と申します。高月部長からこちらに来るようにと」
「えー、晴山涼太様ですね。少々お待ち下さいませ」
誰かに電話を掛け、話す彼女をじっと見てみる。
白のラインが入った紺色の制服と帽子。エンジ色のリボンに白のブラウス。
うん、いい。可愛い制服だ。
「お待たせ致しました。こちらでお待ち頂けますか」
彼女に連れられ、ロビーの隅にあったソファに座らされた。
数分後、紅茶と思われる飲み物とクッキーが出され、朝何も食べずに出てきた俺は迷わずそのお菓子と紅茶を頂いた。
「うまうま。何の紅茶かなぁ」
「フォートナム&メイソンのアップルティーです」
「へー、ふぉーとなむめいそん?」
「はい、フォートナム&メイソンです。晴山涼太様」
え、これってちょっとヤバくね?
なんかどっかで見たことがあるすげぇ厳つい奴が俺を睨んでるんだけど。
俺、何か間違いでも侵したか?
「久し振りだな、晴山総長」
「あ、あ…」
冴木だ、冴木雄也(さえきゆうや)だ。
なんでこんな所にこいつが居るんだ。
「傷は、まだ痛むか?」
目を細めて笑う冴木雄也を見て、久し振りに腹の傷が痛んだ。
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