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熱
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冷たい手にびくりと体を震わせると、一旦手が引っ込められる。
「手、冷たい……っ。拓斗…たく、と……」
滅多に風邪もひかなければ体を壊すこともない俺は、こんな痛みは始めてか、覚えてないくらい久しぶりで、それに加えて拓斗の手の冷たさに、全身が震え冷や汗が噴き出す。
怖い。昨日の温かさのない拓斗の手が怖い。突然の頭痛が、苦しさが、怖くてたまらない。
「たくとぉ……っ」
「薫…、熱がある……」
どけられた両手から露わになった額にこつんと拓斗の額をくっつけられる。
顔が近いとか、手を離してほしいとか、いつもだったら思うんだろうけど、考えている余裕なんてなくて、ただされるがままでいた。
「ちょっと待ってろ、解熱剤とか誰かが持ってるかもしれないから、聞いてくるよ」
「……っ」
立ち上がった拓斗の服を無意識にぎゅっと掴む。
振り向いた拓斗は驚いた顔をしていて、また俺の方へ来て、しゃがみ込んだ。
「薫、大丈夫だから、待ってろ。すぐ戻るから。眠れそうだったら、寝ちゃってて」
「拓斗……」
ふわりと頬を撫でられると、自然と瞼が重たくなった。
頭痛も苦しさも治まっていないのに、なぜだか眠気に襲われる。
「待ってろ、薫…」
ちゅ、とおでこにキスを落されて、意識が遠のいていく。俺の名を呼ぶ声だけは、しっかりと耳に届いていた。
そういえば、いつから俺を薫と呼ぶようになったんだっけ。
入学式で会った時はまだ、城田って呼んでいたよな。
ああ、そうだ。俺が拓斗のことを、下の名前で呼んだ時、あの時から拓斗も俺を……。
意識が遠のいていく。頭痛も苦しさも和らぐことのないまま。
拓斗…、早く、帰ってきて……。
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