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倉3~R18腐、オリジナル
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五
水原学園高等部、二年B組北岡麟の死は、地域社会を騒然とさせたけれど、早々に犯人が割れたのと、事が少年凌辱殺人という、あまりにもセンセーショナルな内容だったためにかえって人の口端に上らず、十年を経た今となっては誰も知らないに等しい。
そう私は捕まらなかった。
被害者の躰に遺された、三種類の精液が決め手となり、星田と島井と木川が逮捕されたのだ。
三人はレイプのみ認め、扼殺については否認した。
当たり前だ。
真犯人は私なのだから。
でも世間はそうは思わなかった。
同級生を三人がかりで暴行するようなやつらだもの、殺したって不思議じゃない。
世間はそう決めつけてくれたのだ。
現場からは三人以外の体液も検出されたらしいが、三人の印象があまりにも突出しすぎ、三人は長いこと服役した。
罪の意識はさして続かなかった。
星田は実際に私を襲ったのだし、島井と木川だっておんなじようなものだ。
私が殺したあのひとだって、あんな目に遭って生き続けるのは死ぬほどつらいはずだ。
十年という歳月の中で、私はいつしか、自分のしたことは、安楽死だったのだと考えるようになっていた。
高校は、別のところへ行った。
いくら噂が響かなかったと言っても、殺人のあった学校になんか、そうそう通ってはいられない。
(その真犯人が自分だったら尚更だ。)
美形にこだわり続けたせいか、恋人はなかなか出来なかった。
短大生の時、ハンサムな恋人を得たが、もっと上物をと、物色してる間にほかの女に取られた。
落ち込んでるさなかに奇跡の再会があって…
私は先月結婚した。
相手はあの、天野秀臣。
中学時代の理科の先生だ。
二十六才だった先生も、今は三十六才のオジン。
でもハンサムな面差しは変わらず、何より本家が資産家で、遺産を一番たくさんもらえる順序だという、そこにも完璧に目がくらんだ。
「本家の息子が早くに亡くなってね、うちが継がないと家系が絶えちゃうんだ。きみ、旧家の内儀やれる?」
私が何と答えたかは、ご想像にお任せする。
新婚旅行はヨーロッパ一周。
あんまり贅沢は嫌よと言ったのに、オプションの、アメリカ、グランドキャニオンまでつけると言ってきかない天野に、断念させるのはひと苦労だった。
帰国二日目。
私は初めて天野の実家に入った。
優しいお義母様、無口なお義父様、どちらも私を本当の娘のように歓待してくださった。
「本家さんがね、可愛いお嫁さんに早う会わせてくださいって」
「では明日にでも」
私が言うと、
「いえいえ。本家さんのことは、一分でも早い方が」
「帰国すぐなのに悪いねえ」
本当にすまなそうに、お義母様お義父様が言う。
まだ時差ボケなんだけどなあ…
本心がはみ出そうだったけど、
「善は急げだ。澪ちゃん俺、車出すわ」
こういう土地では嫁はノーは言えないものなのだろうな。
嫌々渋々、私は立ち上がった。
六
本家にたどり着いた頃にはもう、日はとっぷりと暮れていた。
文化財とかに選ばれそうな、ほんとに見事な町屋。
長い白壁に囲まれた敷地は驚くほど広い。
武家風の門構え。
こじんまりとしてるけど、趣のある前庭。
母屋はどこまで続くのかと思われるくらい奥行きがある。
なのにさらに離れがあり、裏手は日本庭園。
そしてその奥に、ほんとにぽつりと倉があった…
表札の文字は風雨にさらされ、かすかに二文字目が読める…読めない…
岡?
それとも田?
「天野じゃないのね」
「うち、先代まで傍系だったから。いろいろあって今は次席。ほら池。あれ、めちゃめちゃ高い鯉」
確かに形も色も、めちゃめちゃかっこいい。
でもって倉。
掛け軸?
壷?
刀とかもあるのかな…
思うだけで胸高鳴り、頬が弛む。
「挨拶前に倉見ちゃう?」
天野がふざけた感じで言う。
「見ちゃう! 鍵! 鍵!」
「重いよぉ?」
投げ渡され、重みに少しよろけながら、私は倉へと駆け出した。
南京錠をがちゃりと開けて、分厚い扉を引き開く。
中扉は引き戸、中は土間。
そして板張りの床が一面に広がる…
広すぎる。
広くて何もない。
全く何も。
あるのは資産価値のない、椅子とか段ボールとか、食べ残しの食器とか、食品とか…
!
ひとがいるのだ。
お宝はないけどひとが…
立ち尽くす私を、天野がいきなり中へ押した。
よろけて土間を突っ切り、板張りの床に突っ伏す羽目になった。
「痛いじゃない!」
きっと振り向くと、そこに立つ男はすでに、私の知っている天野秀臣ではなくなっていた。
同じ顔。
同じ声。
でも違う。
冷たい目。
冷たい表情。
そしてそのひとは笑った。
美しい顔立ちに全く不似合いな、冷たい、皮相な、凍るような笑顔で笑ったのだ。
「今日までずっと我慢してきた。もう芝居しなくていいんだと思うと、本当にほっとする」
「秀臣さん…」
「二度と名前で呼ぶなよな。穢らわしい殺人者。なんで」
と、男はそこで言葉を切った。
「なんであの子を殺した」
あの子。
北岡さん。
表札。
…岡。
あの日。
旧体育館。
器具倉庫。
そんな。
そんな。
そんな!
「じゃあ、私と結婚したのは…」
ここへ連れてくるため…
「旅行中、私に触れなかったのは…」
私になんか、全然関心なかったってこと…
天野は全く否定しない。
「もういいかなあ。こっちのサプライズも待ってるんだけど」
言いながら、現れたのは十年前の悪夢だった。
島井、木川、…星田…
三人はすでに裸で、屹立したそれを各々に、てらてら光らせている。
「処女なんだって? その年で」
「大事に大事に守ってきたのか」
「使っときゃ良かったなあ」
げらげらげらげら。
私は床に押し付けられた。
ブラウスとブラジャーが引きちぎられ、スカートと下着が引きむしられた。
生まれたままの自分と、生まれたままの男たち。
しかも三人。
不細工で、小汚くて、何か獣みたいなにおいがする。
星田が私の乳房を鷲掴みに掴んだ。
「十年は長かったぜ」
体臭。
生臭い息。
あの時の再来だ。
あの時は助かった。
助けてくれた人もいた。
今はいない。
私がこの手で殺してしまった……………
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
天野は全く答えない。
「でも私は、あのひとを守ったのよ! あのひとは死んで幸せだったの! あんな目にあって、生きてたって、幸せになんかなれるわけないじゃない!」
「黙れ!」
圧しつぶすような天野の声。
ものすごい怒りが宿ってる。
誰だったのあのひとは?
あなたにとってあのひとは、それほどに大切なひとだったの?
「弟だと。義理の弟」
「もしかして恋人だったかもなあ。あれほどの器量だ。今のおまえなんかより、数段数倍美形だった」
「星田なんかあいつに見とれて、処女ほっぽってこっち来やがって」
「だからこいつには俺が一番乗りの権利あるんだからな。だめだっつの俺が先って、あっあっ」
木川か島井か、どちらかわからないけど私の両足の間に割り込んだ。
「いやあああっ!」
叫んでも、暴れても、両手両足顔頭、押さえ込まれて抗いきれない。
両脚の間に割り込だ男が思い切り腰をねじ込んでくる。
突き立てられた私はありったけの声で叫んでるけど誰も気にしてない。
笑ってる。
げらげら笑って私を揉みしだいてる。
痴漢に触られるのだって耐え難いのに触られて、揉まれて突かれてキスされて吸われてああもうやだ!
「教師でしょう! 教え子不良に差し出しちゃだめじゃん! こんなこと、ああっ、ああっ、あああっあっ!」
天野は黙って見ている。
血と精液にまみれた股間にも、痣だらけの躰にも全然動じない。
怖い。
許して。
許して。
許し…
無駄だ。
私は一生許されない。
許さないために天野は私を妻にした。
こんなことが続くのだ。
永遠に。
一生。
でもお義母さん、お義父さんならあるいは…
「親父もお袋も当てにすんなよな」
とどめを刺すように天野が言った。
「麟が死んで一番傷ついたのがお袋だ。そんなお袋見てられなくて、少しおかしくなったのが親父だ。おまえが嫁いだのはそういう家だ。楽しみだな。これから」
私は返す言葉もない。
一瞬の気の迷い。
その行動が全てを終わらせた。
私は妻。
捕らわれの…妻…
完
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