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俺は魅せられたのか…(オカルト強)
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約束の日が三日後に迫っていた。
こうして都雪くんを抱き締めながら眠るのも、あと少しと言うことになる。
もしかしたら、もっとこの家に居るかも知れないとは言っていたが、なんとなくそれはないのだろうと感じていた。
俺は、じいさんの『魅せられた』といった言葉を思い出していた。
そう、それなのだ…
今まで庇護欲だの、弱いものを守るのは人としての当然の性だのと自分に言い聞かせて来た。
でも、本当にそうなのだろうか?
よく考えなくても、冷静になってみたらおかしい。
俺は最初から都雪くんに強く惹かれ、都雪くんから離れたくないと強く思っていたのではないか。
最初は恐怖から抱きしめて寝てしまったが、それ以降もこんな風に抱き締めて寝るなんておかしくないだろうか。
例え、誰かにホモか?と思われてもいいなんて開き直って、外でくっついたりするだろうか。
普通に考えれば、やっぱりあり得ない…
これが、魅せられたと言う事なのだろうか。
そう思った方が納得行くことが嫌だった。
その思いを否定したくて、自分は都雪くんが好きなのだと思おうとした。
だが、その思おうとすると同時に、魅せられたらどうなるのか—と言う恐怖が襲ってくる。
都雪くんを抱く腕に力を込める。
都雪くんがそっと俺の背中に手を回す。
そろそろ肌寒くなる時期、お互いの体温がじんわりと伝わり始めたその時、腕の中で都雪くんの肩がビクリと跳ねた。
なんだ…と思う間もなく、それはやってきた。
コンコン……
最初は雨が窓を叩いたのかと思った。
だが、何か薄ら寒いものを感じて俺の身体も硬直する。
コンコン……
コンコン……
それは、雨にしては不規則で、枝が窓を叩くにしては規則的だった。
俺は窓を背にしているので、そこに何があるのかはわからない。
ただ、声を殺し、息を殺し、そこにいる何かが去るのをただ、願う。
コンコン……
コンコン……
窓を叩く音は、等間隔で続いている。
どのくらい、その音が続いていたかわからないが、恐らくそなには長くないだろう。
音が止んだ。
暫くはそちらへ意識を集中させていたが、その音はそれ以上追って来ないようだ。
俺は、溜まっていた息を吐き出そうと、一旦大きく息を吸ったその瞬間。
俺は再び息を飲み込んだ。
「シゲくん?」
窓側から聞こえて来たのはみーちゃんの声だった。
続けて
「シーゲー」
「シゲ!」
「シゲくん…」
「シーゲーくーん、あーそーぼー」
「シゲ…?」
ナオ、みーちゃん、じいさん、ばあさん…聞き覚えのない声——
次々と俺の名前を呼んでいる。
この部屋は二階。
窓の下に足をかける場所もない。
例え、庭の樹に登って誰かが悪ふざけをしていたとしても、ナオならまだしも、じいさんやばあさんまで、そんな悪戯に加担するとは思えない。
俺の実家に来た奴だと、咄嗟に思った。
人じゃないナニカ——
しかも、あの時は割と重厚な玄関扉の向こうからだった。
だが、今回は一メートルも離れていない背中越しにある窓——薄い濁り硝子一枚先から聞こえて来る。
怖い…怖くて仕方なかった。
だけど、もう、絶対漏らすもんか!と言う変な意地が、なんとか正気を保たせてくれた。
腕の中で都雪くんが小刻みに震えている。
それを宥める様にきつく抱きながら、思わず声が漏れた。
「なんで、俺……」
多分、この疑問に答えたわけでは無い。
都雪くんも、震える声で唱える様にこう言った。
「もうやめて……もうやめて……姉さん……」
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