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翌朝
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気がつくと、朝になっていた。
遮光率の低いカーテンを通して光が差し込んでいて、いつもは煩わしい鳥の声や蝉の声が、俺を現実へ引き戻してくれた。
腕の中には、すっぽりとと都雪くんが収まっていて、安堵に思わず髪に唇を落とすとうんっと一つ唸った。
寝ていたのかも知れない。
気付けば朝になっていから、俺も寝ていたのかも——いや、気絶か!?と思い、下半身を見たが、今回は濡れていなくて良かった。
ふと、昨日のあれは夢だったのかも知れないと、思う。
だが、都雪くんのあの言葉が、鮮明に耳に残っていた。
——姉さん
頭の中にぐるぐると回る。
何かを考えたくても考えられなかった。
重い頭をなんとか持ち上げ、俺は上体を起こした。
それに合わせて、都雪くんものそりと起き上がった。
布団の上に胡座をかいて、都雪くんを見ると、都雪くんも、ちょこんと正座してこちらを向いた。
ぼんやりと間抜け面をする俺とは逆に、都雪くんは、とても寝ぼけてるとは思えない真剣な顔でじっと俺を見据えて来た。
自然と、背筋が伸びる。
「お兄ちゃん…」
都雪くんの表情が少し強張る。
信じてもらえるかわからないけど、と小さく前置きしてから、都雪くんが続ける。
「黙っててごめんなさい。僕も本当にそうなのか、わからなかったから…でも、昨日でわかった。あの声は———姉さんの声だった…」
躊躇うと言うよりは、一生懸命頭の中で説明の仕方を考える様に、都雪くんは眼球を忙しなく動かしていた。
衝撃的な告白であったが、驚くと同時に、そう打ち明けられてホッとしたのも事実だった。
どこかで、実はそうなんじゃないかと感じていたのかも知れない。
だが、あのナニカの声が、都雪くんには単にお姉さんの声に聞こえていた可能性もある。
みーちゃんや都雪くんにもあの声は聞こえていたようだが、果たして自分と同じように聞こえていたのかは、きちんと確認していなかった。
「ねぇ…都雪くん…」
まだ、仕切りに言葉を探そうとしている都雪くんに俺はいくつか質問を投げかけてみることにした。
「あの変な声、都雪くんにも聞こえた?」
都雪くんが恐々と頷く。
「うん…お兄ちゃんの事、呼んでた…」
残念ながら、俺を呼んでいた事は間違いないらしい。
背中にゾゾっと毛虫が這う様な悪寒が走ったが、それでも、俺は落ち着きを失わなかった。
自分でも少し驚いているくらいだ。
「それって、お姉さんの声だった?」
「ううん。ナオくんとか……昨日は、みーちゃんや、おじいちゃん、おばあちゃんの声だった」
「じゃあ…なんで……」
お姉さんだと思ったのか、それは皆まで言わなくても察しがつくだろう。
都雪くんは一度、困ったように俯いて「僕も、よくわからないけど…」と口の中で呟いた。
今回ばかりは、わからないと言うことで何かを誤魔化している訳ではなくて、相変わらず、難しい顔で言葉を探している様だった。
特に、都雪くんを手助けしようと考えたわけじゃない。
むしろ、この話題を持ち掛けるのなら、今かも知れない。と、思った時にはその言葉を口にしていた。
「お姉さんは、魅せられてるってこと?」
俺の言葉に、都雪くんの目が、零れんばかりに見開かれた。
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