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彼の愛
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俺は霧明を追いかけていた。
なんであいつが走っていたのか。どこに向かっていたのか。わからなかったけど、なぜか霧明が苦しそうにしていた。
だから、霧明のことをほっとけなかった。
とにかく話がしたかった。
霧明のことを知りたかった。
また、あの日々のように二人で笑いたかった。
「霧明っ、どうしたんだよ!」
霧明は俺から逃げるように走る。
廊下には俺と霧明しかいない。
「おい、待てったら!!」
走るスピードは俺の方が速い。
そしてやっと、霧明に追いつき、折れそうな細い腕を掴んだ。
「お前っ、どうしたんだよ!」
止まってからも霧明は俺を見ない。
…正直腹が立った。
「どうして俺を見ないっ?!!どうして俺を無視するっっ?!!!!なんでっ、!!!!!」
霧明に怒鳴った。
すると霧明はキッ、と俺を睨みつけた。
その目には少し涙がたまっていて、獣のような恐怖を感じる目だった。そして、美しかった。
俺はその目に少し見とれてしまった。
「ーーーーッッ??!!!」
次の瞬間、その骨と皮しかないような腕から出される力とは思えないほどの衝撃が俺の顔を貫いた。
「あっ?!あ、あ”あぁ、あっあぁぁーーーっ?!!」
ボタボタボタッ
俺の鼻から赤い液体がボタボタと流れだす。床に赤い水たまりが出来上がっていく。
どうやら俺は霧明に殴られたらしい。
それも容赦無く。
「あっ、あ、せん、ぱいっ…」
霧明の怯えたような声がした。
俺は痛みに体を震わせながら鼻を手で覆っていた。
その時、
「綺麗だ…っ」
確かに霧明の声でそう聞こえた。
ゆっくり霧明の顔を見た。
泣きながら笑っている。美しいものを見るような目で俺を見ていた。
「あっ、あっごめんなさいごめんなさいっ、!」
霧明は走っていってしまった。
「ま、てっ!ーーっ!!いたっ、ぁ…!」
顔の痛みのせいで追いかけることができない。
またあいつとちゃんと話せなかった。
なんで殴ったのか。なんであんなことを言ったのか。なんで、
あんな顔をしていたのか。
そして、
あの顔を見たとき、
興奮してしまった俺は、どうかしているのだろうか。
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