アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
結弦の墓 1<清、猇視点>
-
俺達は波留が彼とゆっくり話せるよう挨拶をするとその場から離れた
離れて少しすると、雨の音に混じって微かだが波留の嗚咽が聞こえてくる
(波留はずっと我慢していたんだ。)
波留は事件の事をあれ以来、何も話そうとはしない。
だが、それが彼にとっても重荷になっているのだろう
「…全部、話してくれれば良いのに」
ボソリと呟くと、俺の隣を歩いていた猇はふっと鼻で笑った
「おいおい、ゆっくりでも構わねぇだろ。…あいつがきちんと話してくれるさ。」
そうだ。
急かしたって良いことはない
「そうだね。……しっかしまー、読みが当たったのがしんどいね。」
“天原結弦”
天原家の墓という事は読みは当たっているはずだ
「波留の友人が天原結弦…、その天原が殺された。しかも裏で動いてるのは和嶋会…か」
(もう関西で一回暴れようかな…)
去年の様に…
そんな俺の考えが解ったのか、猇が溜息をもらす
「あっちの動きを見てからの方がいいだろ。…親父にも迷惑かけられねぇし」
「でも、もしだよ。もし、狙いが波留になったらどうするのさ」
この間のカフェに和嶋会の者がやって来たのを思い出す
「あいつ等は完全に波留を狙ってた。…先手を打っておいた方がいいのに越したことはないよ」
「だからって波留を縛るなよ。…あいつには気をつけるよう言っておけ。なるだけ俺達、組の者から離れるなって…」
「……うん。」
納得はいかなかったが、ここで駄々をこねても仕方がないのかもしれない
そう思った俺は、黙って頷いた。
「…あ、あの~…」
少し下を向いていた俺と煙草を吸うため、ジッポーを取り出そうとする猇に誰かが話しかけてきた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
248 / 557