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おまけ 11
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秘書室に戻ってきた凪は、自分のデスクに置かれたカフェの紙袋を手に取り、訝しげに見つめる。
雅臣が詫びのつもりで置いて行ったのかとも考えたが、そんな殊勝な事をする人間では無いと決めつけ除外する。目の前の牧野に目を向けてみるも100%違うだろう。では橘かと思い声を掛けた。
「あの、橘さん、これって橘さんですか?」
紙袋を掲げて聞いた途端、牧野がバンッと大きな音を立てて分厚いファイルを閉じた。
...うわ、何で機嫌悪いんだろ。...生理か?それならラッキーだな。
牧野が生理休暇を取る度にデスクにファイルを山積みにされている。明日は幸い土曜日で休み。今日も午前様になること間違い無しなのでそれをラッキーと思った。
「私ではありません。先程専務が置いていかれましたよ?」
...恭司さんが?
橘の言葉で牧野の機嫌の悪さの理由も分かった。けれどそんな事よりも、恭司が自分の為にこれを買ってきてくれた事に胸が高鳴った。
中を開けると、凪の好きなカフェモカと、ベーグルサンドが3つほど入ってる。きっと忙しくてランチに行けないと思っての事だろうと考えると、帰る事を諦めて雅臣とランチに行った事を、申し訳なく思った。
やっぱ絶対帰ろ!
そう決めてカフェモカを一口飲む。もう冷めてしまっているそれが、心をポカポカにしてくれた。
...格好良すぎるよ恭司さん。だからドキドキしちゃうんだよ。
そんな事を思いながら必要書類を纏めた。
「お帰り」
専務室に入ると恭司が笑顔で出迎えてくれる。
カフェの紙袋を手にしていても恭司は何も聞かないし何も言わない。凪は素直に頭を下げた。
「恭司さん、これ、有難うございました。俺、常務とランチ行っちゃって...。」
「そんな事は気にしなくて良いよ。タイミングの問題だからね。それに凪はベーグルサンドくらいじゃ足りないだろう?おやつに丁度良い量だよ」
にっこりと微笑む恭司に凪は愛しさが募る。恭司はいつでも凪のことを思いやり動いてくれる。見返りも駆け引きも無く、全てを優しさで包んでくれる。
「愛してます」
スルリとでた言葉に恭司は目尻を下げた。
「ふふ、ベーグルサンドでそんな大層な言葉を貰えるとは思っていなかったよ。これからは毎日デスクに置いておこう」
ベーグルサンドが嬉しくて言った訳じゃ無い。でも恭司もそんな事は当然分かってる。こうやって二人の距離が近くなっていく事が何よりも嬉しいと凪は思っていた。
「凄く嬉しいですけど、毎日おやつにベーグルサンド食べてたら俺、ブックブクになっちゃいますよ?」
「どんな凪でもきっと可愛いよ」
恭司のモノクロの世界に色をくれたのは凪だ。初めての恋。心から欲しいと渇望し、傷つけていると分かっていたあの頃でさえ手離す事は出来なかった。どんな姿であったとしても、凪への気持ちは微塵も変わらないだろう。
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