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美味しい
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買い物も終わって、なんとか顔の火照りの治まった俺とアキラは、遅めのランチを食べるために、アキラのお薦めの店に来ていた。
夜はイタリアンバルになるという、俺一人なら確実に入らないような小洒落た店に迷うことなく入るアキラに、ただ付いていくだけの俺。
常連なのだろう、店員に軽く挨拶されているのが見えた。
何を選んだらいいのかわからない俺は、アキラの薦めでクリーム系のパスタのランチセットを頼む。アキラは、ガッツリ食べたいとチキンソテーのセットを頼んでいた。
洗練された店内でも浮くことなく、自然に佇むアキラに軽く見とれていると、俺だけじゃなく、まばらに座る客のほとんどがアキラに見とれていた。
やっぱりモテるんだろうな。ぼんやりと水を口に含みながら、普段アキラが俺といない時に何をしてるか、ほとんど知らないことに気が付いた。
アキラは、大学にも友人が多く、俺と一緒じゃないときには大勢に囲まれているところをよく見かける。
アキラは、俺が人付き合いが苦手なことを知っているから、親しそうな友人でも紹介されたことはなかった。
こんな風に二人で出かけるのも本当に久しぶりで、アキラの行きつけの店に連れていってもらえるなんて、アキラのテリトリーに入れたみたいで嬉しかった。
ランチが来るのを待っていると、カフェ利用としての客が増え始める。女性客の多さに少し居心地の悪さを感じていると、アキラの顔見知りらしき女の子が声をかけてきた。
「アキラじゃん!珍しいね、こんなとこで会うなんて。最近、“K”で見かけないから、寂しかったよぉ~」
いきなりアキラの首に抱きついてきた、その子をあっさりとかわし、
「ワリいけど、今ツレといるから。また今度どっかで会ったら声かけて」
とそっけない対応をするアキラに少しホッと安心する。
「じゃあ、またね?次会ったら、今日の埋め合わせしてね!」
馴れ馴れしい態度は、この子がそういう性格なのか、アキラと本当に親しいからなのか、俺にはわからなかった。
去り際に、俺の方を見てにっこり微笑まれる。俺にまで愛想を振り撒かなくても。
「今の子、・・・可愛かったね」
本当はどんな関係なのか聞きたいのに、聞けなくて、思ってもいないことを口にする。
「ふうん、あんなのが好みなの」
少し不機嫌になるアキラに、どう対応すればいいのかわからず、戸惑っているとアキラから謝ってきた。
「・・・ゴメン。そもそもオレの知り合いが寄ってきて、お前に嫌な思いさしてんのに、キレるとこじゃないよな」
お前が可愛いとか言うからムカついて、とぶつぶつ言っているアキラに、心の奥がほっこりした。
「オレ以外の奴、誉めないでくれよ」
ストレートな言い方に、どんどん顔が染まるのを感じる。
やっぱりアキラは変わった。今までならこんなこと、絶対に言わなかった。
嬉しい変化だが、俺には恥ずかしすぎてずっと俯いていた。
その後、運ばれてきたアキラの選んでくれたランチは美味しかった。
幸福感も手伝ったのだから、当然といえば当然だろう。
ただただ、幸せだった。
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