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仮初め
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アキラは、辞めて欲しそうにしていたが、バイトは続けていた。
やっと仕事に慣れてきたところだったし、何よりもお金の為にも続けたかった。
バイト代があれば、お金を気にせずにアキラとまた出かけられる、そんな淡い期待と下心もあったから。
八嶋さんとは、あれからしばらくはシフトが合わず、なかなか顔を合わせなかったが、久しぶりに同じシフトの日、自分から報告をした。
浮気はされていたが、話し合って謝られたこと。お互いに別れたくなくて、仲直りできたこと。
八嶋さんの助言通り、言いたいこと全部ぶちまけたらスッキリしました、と笑って伝えると、良かったな、と喜んでくれた。
「幸せそうだな」
そう言われると照れるしかないが、幸せなのは本当なので、正直に頷く。
八嶋さんの表情はやっぱり切なそうだった。八嶋さんの恋は上手くいっていないのだろうか。
*****
シフトで一緒になろうがなるまいが、アキラの前では八嶋さんの話題は一切出さなかった。
バイト先で、八嶋さん以外の同僚とも親しくはなっていたが、そいつらの名前も全く出さず、ただ今日のオーダーがどうだったとか、当たり障りのないことしか話さなかった。
アキラを不安にさせたくない、ただその思いからそうしていたが。
・・・それが、間違いの始まりだったと知るのは、もう少し後。
バカな俺は、全て後から知るのだ。
俺たちに足りないものがなんだったのか。
いや、本当は、何もわかっていないのかもしれない。
何もわかろうとせず、何も見ようとせず、ただ仮初めの幸せに目を眩まされ、その場を流されていた───
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