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シュン君
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先生がまた、ポカンとした顔をしていた。
「え?だってリョウ君、アキラ君と・・・それに、僕とも・・・えぇ?」
何を今さら、こいつ頭がおかしいのか、そんな混乱をしているのだろう。動揺する先生は面白く、正直もっと見ていたくなったが、ちゃんと話さなければ。
「俺、ずっと、自分はただ人間に対して興味がないだけで、異性愛者だと思っていたんです。アキラのことは、アキラだから好きになったんだ、アキラは特別なんだって」
もちろん、今でもアキラは俺にとっては特別な存在だ。それは変わりようがない。変えたくないといったほうが正しいのかもしれない。
だからこそ、昨日、あの男に本気で口説かれて怖かったのだ。
拒めなくなりそうで。
アキラを好きでいられなくなりそうで。
「でも、この前からあのバーで変な男に迫られてて、正直、ドキッとさせられることもあって。・・・それでわかったんですよ」
だから、ある意味先生のおかげですね。と俺が満面の笑みで言うと、先生は、まだ納得していないような複雑な表情だった。
本当は、それだけじゃない。
でも、なんとなく先生には言いにくかった。
だから、話を変えた。
「俺のことはどうでもいいですよ。それより、先生の彼氏さんのこと教えてくださいよ」
しばらく忙しかったこともあって、今日は急ぎの仕事もない。
普段なら、こんな話題に食いついてきそうな小林さんも休みだ。
代役には到底およばなかったが、俺なりに頑張って盛り上げながら、先生と彼氏の馴れ初めなどを聞き出していく。
先生は、照れに照れながら、話を進めていった。
それによれば、先生の彼氏、シュン君は、なんと俺よりも年下で、今年24歳のサラリーマンだそうだ。
シュン君は会社勤めのため、基本的に土日が休みで、先生と休みがなかなか合わないのが悩みらしく、あのバーに俺が連れていかれた日も、急に会える時間がとれたため、慌てて会いに行ったのだとか。
「あの時はごめんね・・・」
しゅんとした顔で謝ってくる先生に、また同じ話に戻るのも俺が困るため、にっこり笑って答える。
「恋人と会えるってときに、俺のこと気にするほうがおかしいですよ。・・・それより、どういった馴れ初めなんですか?」
馴れ初めだけは、なかなか話そうとしなかった。
「言いにくいんだけどね。最初は、シュン君のこと遊びのつもりだったんだ。僕のセフレの一人だった。でも、ある時から急に口説かれはじめて・・・最初は面倒だって思ってセフレとしても会わなくなったんだよ?それなのに、僕が行くとこ行くとこに現れて・・・」
ストーカーっぽいな、そう思ってしまう。
シュン君って大丈夫なんだろうか?先生の選んだ人だから大丈夫なんだろうけど。
「ストーカーっぽいでしょ?・・・僕も最初は引いてたんだけどね」
そこで、言葉を区切って、先生は少し遠い目をした。
この顔を何度も見たことがある。
先生が過去を思い出している時だ。
「・・・あんまりしつこいから、ある日全部話したんだ。僕の過去の話、全て。その上で、だから君とは付き合う気はないってはっきり断ったんだ」
先生が遠い目を止めた。俺の顔をまっすぐに見つめてくる。
その顔は、本当にきれいだった。
「そしたら、シュン君が言ってくれたんだ。『忘れなくていいです。あなたの過去も含めて僕が愛します。だから、あなたの苦しみを僕にも分けてください』って」
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