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知らぬが仏
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十数分後…
いや、たぶんそこまでは経ってないと思うけど、この無言の時間はそれくらい長く感じた。
海斗さんはその後、ずっと画面見たまま何も話しかけてくれず、俺は暇持て余していた。
かと言って、動くわけにいかず…
「うん。OKだよ。こっちも異常なしと、あとは…」
俺はこの気持ちの悪い吸盤をすぐに外してくれるのかと思ったのだが…
海斗さんの手は俺の横すり抜けて、俺の首をその長い指でなぞった。
その次に鎖骨、胸へと下りていく。
背筋にゾクリとした何かが走る。
気持ち悪いわけではないが、言葉にならない感覚に襲われる。
何これ…
少しだけ、ルイに血を吸われた時の感覚に似てる…
「首の方の傷はもうほとんど消えてるね。契約印もちゃんとある。ん?」
俺が妙な恥ずかしさで悶えていると海斗さんの手は、俺の左の胸のあたりで止まった。
「この傷痕は?」
胸の残る10センチくらいの切り傷を指差してそう言った。
その傷は、すでに薄くなっていてよく見なければわからない程度なんだけど…
「えっと、これは…5年前に海で溺れたあと、気づい時にはあって…その頃は、もう少し濃かったですが…」
「ふ〜ん。じゃあ、岩礁とかで傷ついたのかな…あまり深くはなさそうだし…」
海斗さんは全部見終わったのか、またカルテに書き込み始める。
5年前か…
あの夏、海で溺れたらしいんだけど俺自身よく覚えてない…
ルイのところへ遊びに行って海で遊んだところは霞んでいるものの覚えてはいるんだけど…
其の後は、全然記憶になかった。
気づいたら、病院にいてすごく不安そうな顔をしたルイがいたんだっけ。
あの頃ぐらいからかな。
ルイが過保護になったのは…
俺が暇のあまり視線を泳がせているとふと海斗さんの襟もとから赤いものが覗く。
あれは…
俺の手首と同じ…?
「海斗さん…?」
「ん?」
「いや、なんでもないです…」
「そう?」
俺は、それについて深く聞くのは辞めた。
海斗さんは、不思議そうに頭を傾げるも特に追求することはなかった。
なんで聞かなかったのか。
怖かった。
それに聞いちゃいけないと思った。
海斗さんが誰に血をあげようとそれは俺のとやかく言える事ではない。
だから、知らない方がいいんだ…
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