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2.見えない終わり2
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「余裕だな」
「栗原はあなたより僕を信じてくれます」
言ってしまった後で、悪い予感に冷や汗が流れた。もしこの人がただの馬鹿ではないとしたらーー僕はさらに弱みを握られているということになる。
そんなはずはない、この人はただの馬鹿だと信じたかった。だけど、僕はすでに察していた。
荒川さんにはまだ、僕を追い詰める手札がある。
それが何なのかまでは分からないけど、きっとすぐに荒川さんが見せてくれるだろう。その手札は、僕に見せてこそ効力を発揮するものだから。
僕の予想通り、荒川さんは何かを探すようにスマホをいじり始めた。
「へえ……これを見たとしても、栗原はお前を信じられるっていうのか」
荒川さんが僕に突きつけたスマホの画面に映るのは、白地に黒いペンで文字が書かれた、何かの写真。
よく見るとその字は、紛れもない僕の書いた字だった。栗原もよく知っているはずの、僕の字がはっきりと写っている。
このときばかりは、高専生の僕もテクノロジーの進歩を恨んだ。
「あの手紙……撮ってたんですか……」
頭を殴られたような気分だった。栗原への手紙をまた脅迫材料にされるなんて、誰が予想できただろうか。いや、馬鹿だったのは荒川さんではなく、手紙を返してもらったことだけで油断した僕というだけの話だったのか。
自分がこれからどんな目に遭うのかなんて、言われなくてもわかる。
あからさまに動揺する僕を見て、荒川さんが笑っていた。
「来い、中森」
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