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こんなに気になった相手は初めてだった。というより、全く相手にされなかったのも。
ほとんどの奴は、オレに興味を持つ。
母親と呼ばれるあの女は、目鼻立ちのはっきりとしたかなりの美人だったし、父親という名のクソ野郎も、黙ってさえいれば、実年齢より10歳は若く見えるイケメンというやつで、産まれたオレは二人のいいとこ取りして、ハッキリ言えば、10人中8人は振り返るほどの整った顔をしている。
最初はオレに興味を持たないフリをしていても、オレから近づけばコロッと面白いくらい簡単に堕ちる。
なのに、アイツは最初こそ興味を示して見つめてきたのに、すぐにその瞳は興味を失っていた。
どうしても気になって、最後にアイツが話しかけてた奴に、アイツの情報を聞く。
「あー、楠木?あいつなぁ、顔はきれーなんだけどなぁ、なんかきれー過ぎて高嶺の花?っての?なんか、近寄りがたいとこあんだよなぁ」
結局、名字がクスノキだということしか、たいした収穫はなく、連絡先も知らない奴に理不尽な苛立ちを感じていた。
*****
事態が急展開するのは、オレがカラオケでの出会いなどすっかり忘れかけていた頃だった。
オレの趣味の中の1つ、カメラ。それの師匠だと勝手に思い込んでいるカメラマンの写真集が久しぶりに出版されていて、ふとまだ買ってないなと思い出し、ぶらっと軽い気持ちで本屋に立ち寄った時だった。
まさか、あの綺麗な横顔は。
あの時感じた興味がムクムクと沸き上がる。
しかも、アイツが立ち読みしてるのって、あの写真集だよな。
どう考えても高校生向けではない、渋好みのマニアックな趣味だ。共通の話題を見つけて、内心にんまりとする。
あの時のように大きな瞳を見開いて振り向く顔が見たくて、わざわざ後ろから声をかける。まるで今気づいたかのように。
「あれ、この間の。こんなとこで会うなんて偶然だねえ」
案の定、こぼれ落ちそうなほど瞳は見開いてオレを見つめてくる。
「オレもその写真集買いに来たんだよ、びっくりしたわ」
手に持っていた写真集を指差すと、表情を強張らせてしばらく黙ったあと、
「お前も、好きなのか?」
とため息を吐き出すように呟く。
何故か、その声に例えようのないくらい情欲を抱いたオレは、下半身に熱が集まらないよう、必死でオレの敬愛するカメラマンについて、アツく語っていた。
圧倒された様子に、この絶好のチャンスを逃すまいと、畳み掛けるように連絡先を交換する。
それすら慣れていないのか、戸惑いながら携帯を操作する様子に、焦りは禁物と自分に言い聞かせた。
とりあえず、名前と連絡先を手に入れただけで、今日はよしとするか。
クスノキリョウ
名前を知ると、ソイツがかなり近づいた気がした。寝る相手の名前すら気にしたこともなかったオレにとっては、不思議な感覚だった。
「リョウか・・・似合ってるな」
思わず飛び出た言葉にも驚く。こんな陳腐な口説き文句誰にも使ったことない。
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