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今日は金曜日。
昨日増村と出会ってそれっきり、顔を見ていない。
今頃何してるんだろうか。
一人フローリングに寝転びながらそんなことを考えていた。時刻は夜の9時。未だに明日の詳細メールは来ていない。あの様子だと今日のお昼にはメールが来ると思っていたんだけどな。
思えば、告白されてから二週間が経っている。友達として一緒に過ごしてくれたこの期間はとても楽しかった。増村は表情がころころ変わるし、マメだということも知った。
ふふっ。
あれ、俺気持ち悪いな。
友達のこと考えて一人で思い出し笑いをしている自分に引いた。
”ブブッブブッ”
常にマナーモードにしている携帯が机の上で震える。どうやら、電話がかかっているようだ。騒がしく音を鳴らせるそれを取るべく体を起こす。画面にはアイツの名前が表示されていた。
「はい。」
「もしもし。夜に、ごめん。」
昨日ぶりに聞いた声は弱々しかった。
「いいよ。まだ起きてる時間だし。それより、増村大丈夫? なんか、疲れてない?」
「ぜ、全然疲れてねーよ。」
あれ? 照れてる?
「……。今、笑わなかったか?」
あれ? バレてる。
「ところでさ、どうしたの? 電話、用があるからしてくれたんだろう?」
気まずくて話題を変える。
「あ、その件なんだけど、明日、どこか行きたい場所とかある?」
なにそれ。
「もしかして、ずっと俺が行きたい場所がどこだろうとか、そんなこと考えてた?」
「……。」
考えてたんだ。
「笑うなよ!」
何で声に出していないのに俺が笑っていることが分かってしまうのだろうか。そう思っていると君の声が聞こえて来たので、急いでそれに集中する。
「昨日、一緒に出かけてくれるって言っただろ? だから、舞い上がって、聞くの忘れたんだ。嬉しくて、でも、ふとそれに気づいてからずっと悩んでた。アンタに直接聞こうかしたけど、なんか今更な感じもして……」
そこまで言って黙り込んでしまう君。
俺は言う。
「図書館。」
「え?」
もちろん驚く君。でも、そんなこと気にしない。
「図書館デートっていうの、してみたい。」
ふと浮かんだ場所を口にしてみた。本が特別好きという訳でもないのだけれど。
「木曜日の2限さ、課題が出てたよね? だから、明日大学の図書館に行ってさ、一緒に課題をしようよ。」
「あ……。」
「ん? どうした?」何かを話そうとした君に優しく問いかける。
「それでいいのかよ?」
戸惑っている声。
「いいんじゃない? そういうのも。」
言い切る俺。
「……分かった。ご飯は俺が作ってくる。昼食は大学近くにある公園で一緒に、どう?」
「うん、いいよ。増村のご飯美味しかったし。」
「あ、あのな!! そんな……いや、やっぱ何でもない。明日、9時にエレベーター前集合な。」
「え? うん、わかった。じゃ、また明日。」
君が何を言おうかしたのかは分からなかった。ま、明日聞けばいいか。そう思って俺は早めにベッドの方へと歩く。
電話越しでも感じる。声から、君が戸惑っている姿とか、照れている姿とか、いろいろ。
音を発さなくなった携帯を見つめ、布団に入った。
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