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この時間帯に集まる生徒達の間にはお互いに不可侵の領域がある。
エスケープの理由を訊ねたり追求したりしないのが暗黙のルールなのだ。
悪く言えば無関心とも思える行為も今の篤志にとってはとても有難いものだった。
授業中に訪れる屋上は、昼休みのそれとは全く別の顔を持ち合わせている。
一面に広がるの空の下で、静まり返ったその世界に身を委ねると、まるで自分だけが其の場に取り残されたような孤独感に包まれる。
そしてその瞬間が何よりも心地が好い。
ぐるりと視界を廻らせてみるが、今日は珍しく先客がいなかった。
いち早く指定席を確保できた事にほんの少し浮かれた気分になる。
ポケットから煙草を一本取り出しライターの火に潜らせると、徐に煙を吸い込み十分に舌で味わってから吐き出す。
煙草の先から立ち昇る紫煙の行方を目で追っていくと、そこには重たい雲に覆われたどんよりとした空が広がっていた。
まるで自分の心の様だ、などと考えてしまい思わず苦笑する。
そして思い浮かぶのは、受験シーズン真っ只中にやってきた時期外れの転校生の事だった。
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