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あの夏の日
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「お前、誰だよ!!」
はっと我に返ってそいつの体を押し返す。
顔には見覚えなかった。
俺が邪険に扱ってもそいつは顔色一つ変えず、ニコニコしている。
「俺の事、忘れちゃった?無理もないか、10年ぶりだもんね。」
10年ぶり?
引っ越す前の知り合いだろうか?
俺は中学生の時に転校している。
10年前というと丁度その頃だ。
「俺だよ。同じクラスだっただろ。中学の時。」
やっぱり、中学時代の知り合いか。
でも、全く思い出せない。
同じクラスの奴くらい、覚えてると思ってたけど、10年も経つと思いだせないもんなんだな。
「悪い。全然思い出せない。名前、教えてくれないか?」
一瞬、困った顔をしたそいつ。
あれ?
今の表情、どこかで…。
胸の奥がざわざわする。
「俺の名前は。」
待て!
やめろ!
聞きたくない!
「「芝崎晴海」」
「覚えててくれたんだね!」
あぁ、思い出したよ。
晴海。
ずっと、忘れられてたのに。
忘れたままで居させて欲しかったのに。
「なん…で?」
口の中が、カラカラに乾いている。
緊張のあまり、声が掠れる。
あの頃と全然違う。
細くて、頼りなくいつも困った顔をして。
顔も名前も女の子みたいで、いつも同級生にからかわれてた。
「立花に会いたくて、おばさんに住所きいてきた。ここで待ってたらそのうち会えるかなって。」
笑顔が綺麗で、誰よりも心優しくて。
凄く頑張りやで、俺の初恋の人。
胸がバクバクいっている。
「立花?聞いてる?」
「あ、あぁ。そうだったんだ、晴海。随分変わったね。分からなかったよ。」
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