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「失礼します。申し訳ありません、その…」
「え?」
不意に聴こえてきた声に奏はシーツの中で疑問を抱いた。
物静かなその声はあたかも最初からそこに存在していたかのようにアスタロトとやり取りを始めたからだ。
「済んだところだ、問題ない。だが、それ相当の話なんだろうな?ネビロス」
「それはもちろん」
被せられたシーツを掻き分けて飛び起きた奏の目に飛び込んできたのは、アスタロトが率いる悪魔達の長・ネビロスの姿だった。
それはあまりに唐突な出来事で、"なぜ彼がここにいるのか"と呆けていた奏だったが、そんな彼と目が合った途端顔から火を吹く心地がして再び頭からシーツを被る。
────ネビロス────
彼は地獄の支配者とされるルシファー、ベルゼブブ、アスタロトの三人に仕える6柱の上級精霊の1柱であり、少将そして総監督官でもある。
一日のほとんどをアスタロトの側で過ごす奏はもちろん、彼とは面識があった。
それだけに恥ずかしさが度を増す。
「何か問題が?」
「はい。まだ明確ではありませんが、ここ数ヶ月"奴ら"の動きに不審な点が見られます」
「不審な点?それはどういったものだ?」
「奴らの"救済処置"に減少の傾向が」
「!それは妙だな…」
二人が話す内容は奏にとって全く無理解な事柄であり、耳に入るも今は別のことで頭が一杯だった。
"ネビロスはいつからこの部屋にいたのか"
その事が頭を埋め尽くしている。
「オレ以外にこれを知る者は?」
「ルシファー様やベルゼブブ様にはこれから報告を」
(ルシファー……!?)
過去の天敵の名を耳にし、ようやく事の重要さに気付いた奏は2人が交わした会話を回想する。
(救済処置って言ったよな…。それって何なんだろう?それに"奴ら"って…?)
「いや、報告するにはまだ不明確な点が多すぎる。引き続き監視を行え。進展があればオレに報告しろ」
「はい。仰せのままに。……カナデ様」
「はっ、はい!?」
「その……、お邪魔を致しました。お楽しみ中のところを…」
「っ………いえ…」
奏は羞恥で泣きたい心境ながらそれを我慢し、申し訳なさそうな様子のネビロスが姿を消すとすぐ様アスタロトに詰め寄った。
「なんで言ってくれなかったんだよ!?恥ずかしくてもうネビロスさんの顔まともに見れないよ!」
「言おうとしたが聞かなかったのはお前だろう?」
「だってまさか彼が居るなんて…!単なる焦らしかと思ったし……」
「ならば自業自得だな。オレの話を最後まで聞かなかったお前が悪い」
顔を赤くして怒る奏に笑みを浮かべていたが、ふと真剣な表情に変わり頬を撫でる。
「なっ…なに…?」
「ゆっくり育ててやりたかったが、少し急いだ方が良さそうだ」
「え…?」
アスタロトのその優しい手付きは相手への思いやりが込められていたが、対照的に彼の目は落ち着き放った冷酷さを帯び、奏は背中に冷たいものを感じた。
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