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籠の中 2
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ウリをすると決めた俺を連れ、八澤は母さんの病院を訪れた。
「ご迷惑をおかけしますが、聖夜をよろしくお願いします」
微笑みを浮かべ、八澤に挨拶をする母さん。
「いえ。あなたは病を治すことだけを考えてください。
聖夜くんもそう望んでいますよ」
偽物の笑みを浮かべそう返す八澤に吐き気がする。
だけど母さんに悟られまいと拳を握り、必死に絶えた。
「聖夜、迷惑をかけないようにね」
「……うん、母さん」
母さんの笑顔に、ツキリと胸が痛んだ。
俺の後見人となり、母さんと病院に挨拶をする八澤。
”私は小笠原の親戚筋にあたります、八澤と申します。
支社長も、何か手助けがしたい……と今回治療費を負担させていただくことになりした。
支社長は悔いておられました。もっと早く白川課長に手を差し伸べていたら、こんなことには……と。
それにしても立派な息子さんだ。僕が社会人になれば、きちんと治療費はお返ししますと、そう言っていましたよ。
何も遠慮することはないんです。聖夜くんが立派な社会人になって、返してくれるそうですから。な?聖夜くん”
並べられていく言葉に、俺はうつむき唇を噛み締めた。
何が親戚筋だ、誰が悔いていた、だ。
次から次へとデタラメな言葉が出てくる。
母さんは八澤を信用し、涙まで流しながら感謝の言葉を述べていた。
悔しい気持ちと、腹立たしい気持ち。
そして母さんを騙す苦しさと、母さんが騙されてくれた安心。
色んな感情がない交ぜになりながら、八澤の言葉をただ聞いていた。
金を積めばあらゆる情報が買え、また情報を操作できる。
俺たちにとって都合の良い情報にすり替えるのなんざ、簡単なんだよ。
そう言って、嫌な笑みを浮かべていた八澤。
「う、あ……、」
「効いてきたか?どーだ?久々のお味は」
無理矢理喉に流し込まれた黄色の液体。
体中の血液が駆け巡り、痺れ、疼く。
「そういやあん時、てめぇは言ってたなぁ?
小笠原の親戚筋なんて嘘付いて、すぐにバレるぞってよ?
あれ、嘘じゃなかっただろ?歴とした血のつながりがあるんだからよ」
「く、うぁ……っ、ふ……」
体中を手が、舌が這う。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
心は拒否しても、媚薬によって無理矢理引き出された熱により体は反応を示す。
「誠也が帰ってくるまでてめぇの母親がもたねぇことは分かっていたし、死んだ後はどうやっててめぇを脅すか考えてたんだけどよ。
誠也の急遽帰国が決まって、帰ってくる寸前に死んじまうなんて、なんてタイミングがいいんだっつの」
心底可笑しそうに笑い、胸の突起をギリ……っと潰した。
「うぁっ!ん、あ……っ」
聞きたくない。だけどどんなに拒否しても、八澤の言葉を耳が拾う。
「てめぇもツイてねぇなぁ?次から次へと不幸が舞い込んでよ?
ま、誠也に気に入られたのが運のツキだな。せいぜい誠也のお人形になって可愛がれてろ」
話しながらも手を止めず、次から次へと襲い来る刺激に身体は反応しーーー心が、壊れていく。
「あいつは歪んでるからなぁ。
あれだけお前に執着するくせに、他の野郎が抱いてもいいんだってよ?
むしろ、汚れれば汚れるほどお前の闇が深くなるかな?って喜んでやがった」
ギュッ!とモノを鷲掴みにされ、痛いはずなのに、それすらも快感に繋がってしまう。
「思い出すか?初めてこの部屋に来たことを。
ここでお前は契約書にサインして、体を開いた。
あん時とおんなじ目ぇしてるぜ?
”嫌だ、苦しい、辛い、助けて”
あん時はひたすら父親と母親を呼び続けてたなぁ?
今は誰に縋る?同じように父親か?母親か?それとも、違う誰かか?」
──脳裏に浮かぶ、顔。
それを無理矢理追い去り、俺は出来るだけの力で睨む。
「だ、れに、も……、すがら、な…い、」
はっと鼻で笑い、力のこもった手で俺を追い立てた。
「く、うぁっ、んん!──あぁぁっ、」
白い液が、放物線をえがく。
「誰にも縋らない、ね。──じゃあ独りで耐えるんだな」
「あぁぁっ!く、あ……、っ……」
後ろに、性器をかたどった玩具を押し込まれる。
「懐かしいだろ?お前のここをひろげるために、散々突っ込んでやったやつだ。
あんときゃ3日間だったか?」
ナカに埋まるモノが、震え始める。
「あぁっ、ん、あ、やぁ……っ」
紐で両手と両足を紐で縛り、俺を見下ろしククッと笑った。
「しばらくそのままでいろ。気が向いたら、来てやるよ」
残酷とも言える言葉を告げ、八澤は部屋を出ていった──。
「……く、ぁ……っ、んっ」
明かりを落とされた室内に、俺の声とかすかなモーター音が響く。
──同じ部屋、同じ状況。
思考が過去とリンクする。
『男を咥えこんだこと、ねぇんだろ?ちゃんと躾けてやるよ』
『とんだ淫乱だなぁ?ま、商売にゃうってつけだな』
闇の中、這い回る手、舌。
執拗になぶられ、凌辱され、狂おしい程の快感が、襲う。
──タスケテ。
『はっ。いくら呼んだって、てめぇの親父は死んだ。
母親は病院のベッドの上だ。助けちゃくんねぇよ』
『これで使いもんになんだろ。しっかり稼げよ?』
『夜に映える銀髪に、翡翠の瞳。お前は男を狂わせる。
てめぇの容姿はウリにゃ持って来いだなぁ?』
この部屋で、この場所で。この、籠の中で。
痛みと、快感を、繰り返し繰り返し与えられた。
来る日も来る日も、媚薬で熱を煽られ、玩具で後ろを広げられ、奴自身によって突き上げられた。
叫びたい。
縋りたい。
タスケテ、と。
呼びたい。
──名前を。
隆盛の、名をーーーー。
1ヶ月ほどに渡ってなぶり続けられ、そろそろ商売を始めろ、と言われた。
そして、ゴムを一個1万で売れ、と言い渡される。
その日から、体を売った。
そして、初めて金のやり取りをした瞬間。
あぁ、俺は、汚い。
自分の体は、汚い。
押し寄せる苦痛、嫌悪感。
そして、漠然と思ったんだ。
あぁ、本当に、もう恋なんてしない。
汚れた俺を、誰も好きにならない。
純粋に誰かを想う資格をなくした。
もう、戻れない──。
なのに。
名前が浮かぶ。
顔が浮かぶ。
温もりが、匂いが。
声が。
いつから、だったんだろう。
自分でも気づかないうちに、それは大きく膨れ上がっていた。
もう、誰にも惹かれない、と。
恋なんか、しない、と。
そう誓ったはずなのに。
ひとりで泣くな、と涙を拭う指先は優しくて。
ひとりじゃない、と頭を撫でる手は心地良くて。
ここで泣け、と包む腕の中は温かくて。
───惹かれて、しまったんだ。
揺るぎない強さと、暖かい優しさに。
気がついた時には、もう堕ちていた。
赦されるなら、この気持ちを告げてしまいたかった。
でも、言えない。
あいつが、目の前に現れた。
俺のせいで、誰かを──大切な人を失うのは、もう嫌だ。
俺が、人形になればいいだけ。
そうすれば、もう誰も失わずにすむ。
だから、呼んじゃ駄目なんだ。
だから、縋っちゃ駄目なんだ。
ひとりで耐えればいい。そう、ひとりで。
もう何回精を吐き出したのか、分からない。
吐きだしても、吐きだしても、冷めることのない熱。
意識を失っては、強い快感に引き戻される。
どれくらいの時間が経ったのか。
3日?いや、随分経ってるように思うだけで、1時間かもしれない。
再び意識が朦朧とし始めた瞬間、障子が開く音がする。
「一晩経ったがどうだ?」
八澤の声がする。朧気な意識の中、一晩、という声を拾った。
「はっ。グチャグチャだなぁ」
「うぁっ、く……っ、」
ズルリと後ろから玩具を引き抜かれ、連続的に与えられていた刺激から解放される。
「まだ寝るなよ?」
「く、あ!あぁっ……」
解放されたのも束の間、後ろに八澤が入り込んだ。
「相変わらずいい具合だなぁ?淫乱坊や」
ニヤリ、と嫌な笑みを浮かべた顔が、瞳に映った。
与えられる刺激に、体が跳ねる。
終わりの見えない、地獄。
壊れていく。
壊れていく───……。
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