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青藍祭 3
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「あー、和馬の癖が出たか」
苦笑いしながら近づいてきた葵は、和馬さん?の肩を叩いた。
「和馬、確かに聖夜はお前の理想だろうが、くどくな。
聖夜は俺の……じゃなくて、多分興味ねーよ、モデルなんて」
”俺の”発言に、隆盛がじろりと睨んだ。
「それよりほら、写真、写真。後ろつかえてんだよ」
葵が和馬さんとやらを急かし、なんだかよくわからないままとりあえず写真を撮ってもらった。
ポラロイドじゃなく、ちゃんとした一眼レフのカメラで撮影。
写真はちゃんと現像して、後からくれるみたいだ。
「ありがとうございました」
お礼を言うと、またしてもじっと見られる。
「和馬ー、次」
葵の言葉にしぶしぶ頷き、カメラの調整を始めた。
俺はその場から離れてカーテンの奥を覗く。そこはちょっとした休憩スペースになっていた。
そこで何か作業をしてる奏に声をかける。
「さんきゅ、奏」
「んー」
「町田、アイツは何だ」
ずーっと眉間に皺が寄ったままの隆盛。写真撮るときは皺取らせたけど。
奏は苦笑いしながら、写真を撮ってくれた人物について話してくれた。
「あの人は水瀬和馬さん。葵の友達らしいです。
何でもカメラが得意らしく、中学時代から色んな賞とってるみたいですよ。
今回写真館するから、葵がカメラマンを頼んだみたいです」
水瀬和馬………あ。
「…俺知ってるかも」
あの写真撮ったの、あの人だったんだ。
「聖夜、知ってんの?」
「あ、いや本人じゃなくて写真。俺昔から風景写真とか好きでさ。
あの人の撮った写真が賞とったってなんかの雑誌に載ってて、それがすげー綺麗だったんだよ。
そん時年齢が17歳ってなってたから、大人ばっかな中、高校生が選ばれるなんてすげーって覚えてた。
うわ、あの写真撮った人に撮ってもらえたとかテンション上がる」
俺は思わずカーテンを開け撮影真っ最中の水瀬さんを覗いた。
「聖夜……その嬉しそうな顔止めた方がいいぞ」
「ん?何で……なに恐い顔してんだ隆盛」
振り返ると、より一層眉間の皺を深くする隆盛がいた。
「……別に」
「何だよ」
「会長はただヤキモチ妬いてるだけじゃね?聖夜が嬉しそうな顔するから」
「……町田。」
「こわっ!っと、俺は店番しなきゃ。んじゃなー聖夜。帰りはそっちのドアから適当に帰って。
そっちから体育館の外に出れるようになってっから」
奏はヒラヒラと手を振りながら、カーテンをくぐっていった。
「……ヤキモチ?」
チラリと見ると、はぁ、とため息をついた隆盛。
「…あんまりそんな嬉しそうに他の男の事を話すな」
「……写真だぞ?」
俺が褒めたのは。
「わかってる」
でも、嫌なんだよ
耳元でそう囁かれ、頭を撫でられる。
なんだよ、コイツ独占欲強いのかよ、まったく。
…なんて思いながらも、どこか嬉しい。
「……わかったよ」
そう答えると耳元から顔が離れ、そして正面からだんだんと近づく顔。
自然と瞼が降り始めた──その時。
「イチャつくなら、よそでしてくれませんかね?」
「……おわっ、葵っ、」
声のした方へ目を向けるとカーテンから覗く葵がいた。
慌てて隆盛から離れる。
「まぁったく。会長、場所考えてください」
「うるせぇ」
隆盛の悪態にハハッと笑うと、葵は俺を見て少し苦笑い。
「悪かったな、和馬がいきなり」
「いや、まぁビックリしたけど」
「アイツさ、人物モデル捜してて。聖夜がすげー理想だったみたい。んで思わずがっついた感じ?」
「…どこの誰かさんと似てるな」
意味合いを込めて葵を見る。
「アハハ、似てんだよな、俺と和馬」
確かにね。お前が俺の素顔見たときの気迫とソックリだったよ。
「モデルなんて興味ねーだろ?」
「ない。」
「やっぱりな。和馬には諦めろって言っとく。
もうすぐ撮影一段落しそうだし、和馬来る前に帰っとけ。あいつしつけーから聖夜見たらまたくどくぞ」
の葵の言葉に隆盛が俺の手を引き、そそくさとその場から連れ出された。
のを、葵が苦笑いで見送っていた。
その後クラスのは行かなくていいのか?と聞かれ、いいんだ!と力強く言う俺を不思議そうに首を傾げる隆盛に、逆に隆盛のクラスに行こう!と提案。
拒否されたけど、行きたい!とわめくと、苦い顔をしながらも案内してくれた隆盛。
「………。」
隆盛のクラスに着いて、俺は絶句。
「あらぁ、いらっしゃぁい、りゅうちゃんっ」
「待ってたわぁ」
「うるせぇ、寄るな」
「………。」
俺、まだ絶句。
着いた先、そこはオカマバーだった。
……いいのか、学祭でこんなことして。
「本当に入るのか?」
むしろ入るな、という視線で問いかけてくる隆盛に、俺は頷く。
……言葉に対してじゃない、視線に対してだ。
「……やっぱ、いい」
そんな俺のつぶやきにあからさまにホッとした表情の隆盛。
その場を去ろうとした、ら。
「二名様ごあんなぁいっ」
「ちょ、お前らっ」
「おわぁっ」
「こっちよぉ」
ガシッと肩を掴まれ、中へ。
白い革張りのソファに座らされ、薄いピンク色のドリンクを出された。
……酒?
「だいじょーぶ、ノンアルコールよっ」
隣に座る、筋肉質な……オカマ。
いや、顔は男前なんだが、しゃべり口調が怖い。
助けて、と視線を送ろうとしたら…隆盛は他の人に絡まれていた。
ちょ、隆盛。一人にしないで。
「……そんな緊張しなくても、喰いやしねーよ」
ビクビクと縮こまる俺の横から突然低い声がして、目をパチクリさせる。
「みんなノリのいい連中ばかりだから、楽しんだもん勝ちってなりきってんの」
「……すいません」
怖がって。と言ったら軽やかに笑った先輩。
まぁ飲みなよ、とドリンクを渡される。
一口飲むと、桃の味がしてうまかった。
「君は本田の恋人?」
「へ?あ、ハイ……」
恋人…。なんだ、なんか照れるぞ。
「やっぱりな。本田があんな優しそうな顔すんの初めて見たし。大切にされてそう」
なんて言われると、顔も赤くなる。
「ははっ。かわいーね君」
……オカマバーというか、ホストクラブになってませんか?
横に座る先輩と少し打ち解けてきた俺は、話を弾ませた。
「執事喫茶、すげー人気だったみたいだな」
「めちゃくちゃ忙しかったです」
「生徒会は人気だからな。まぁでも本田にはクラスに参加して欲しかったけど」
え、隆盛が参加?ってことは…
「本田の女装だぜ?そしてこの口調よぉ?」
最後の言葉だけ高い声で話す。
……隆盛の女装、しかもカマ口調とか……え、レアすぎて想像できねぇ。
「何の話をしてんだ?」
解放されたのか、隣に座ってきた隆盛。
思わずじっと見る。
……ダメだ、やっぱ想像できねー。
「どうした?何か言われたのか?」
「人聞きわりぃな。本田もクラスに参加だったら良かったのに、って話してたんだよ」
すると隆盛は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そうだったとしても、会長の権力を行使してでも回避する」
そんなに嫌か、まぁそうだよな、お前の性格上。
そんな感じ?で青藍祭一日目は終了。
なんか大変だったけど、それなりに楽しかったかな。
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