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月光
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私をひたすらからかい続ける季丹殿と叔成を追い出すようにして送り出し、伯岐とともに夕餉をとった。今は二人で庭に下り、月見酒……とはいえ、伯岐には酒はまだ早いだろうから水なのだが……としゃれ込んでいる。
伯岐は日光に弱い体質だから、夜でもなければあまり外を出歩けない。だから、今後は夜に庭の中だけでも散歩できれば、伯岐の気も晴れるのではないだろうか。籠っているよりはずっといいだろう。
「月が、綺麗ですね」
「ああ……」
月光に照らされる伯岐は普段に輪をかけて神秘的で美しい。その横顔を肴にちびちびと酒を呑む。言葉も交わさず、ただ静かに月を見ていた。
ふと重みを感じて隣を見ると、伯岐は私にそっと寄りかかっていた。杯を置き、両腕で壊れ物を扱うかのように抱き締める。伯岐は私を見て安心したかのように笑っている。
なにか、箍が外れた気がした。
そっと顎を持って、伯岐と視線を合わせる。ぼんやりと私を見るその眼は潤んでいて、私を見て切なげに笑っている。……おかしくなりそうだ。少しずつ顔を近づける。呼吸音が聞こえるくらいまで互いの顔が近づいた。心臓が爆発しそうなくらい高鳴っている。
伯岐の唇に、己のそれを重ねる。伯岐は抵抗しなかった。むしろ誘うように薄く唇を開き私を受け入れている。だが、ここでがっついては大人の男としてどうなのか。やおら唇を離すと、伯岐は首を傾げこちらを見ていた。……残念そうに見えたのは、私の気のせいだろうか。
「どうだった?」
「なんだか、とってもよかったです。もっと、してください……」
もう一度唇を重ねる。頭を支え、開かれた唇からそっと舌を絡ませる。しがみつき必死に私に応えようとする伯岐は本当に可愛い。存分に可愛がり、唇を離すとぼんやりと私を見つめている。
「全く、どこでこんな誘い方を覚えたんだい?」
ふと我に返ったのか伯岐は真っ赤になって俯いた。たまらなく愛おしくてぎゅっと抱きしめると、されるがままに目を瞑って心地よさそうにしている。
「仲影様、すきです」
一瞬、耳を疑った。私にこんなに素直に好意を伝えるなど……あり得なかったはずだ。
「その好きは、どんなものかな?」
少し意地悪かもしれないが、私は尋ねる。これをまだ聞かなければいけない。臆病者と言われれば確かにそうだが、慕情でもないすきでこの子を傷つけたくはないのだ。
「まだ、わからないです。でも、ああやって、口付けされるのはしあわせでした」
まだ、早い。焦る必要はない。こうやって接吻を受け入れてくれただけでも大きな進歩だ。頭を撫でながら、そっと目を瞑る。ぎゅっとしがみつく伯岐は体全体で私に甘えていた。
きっと月が私と伯岐を狂わせたに違いない。それでも、今この瞬間だけは、この幸せに浸っていたかった。
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