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羽化
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「本当に、いいのかい?」
「はい。仲影様にしてほしいんです」
私を抱き締めながら不安げに問うてくる仲影様ににっこりと笑って答える。お互い生まれたままで私は仲影様に抱き締められていた。今宵、私と仲影様ははじめて契りを交わそうとしている。
はっきりと慕情を告げると、思いは募るばかりだった。恋は盲目というのは本当らしい。不安に思う仲影様の優しさに、不安のあまり自我を失いかけたところすら、今は愛おしくて愛おしくてたまらない。
「ねえ、伯岐。その、こうやってする時だけでも、私をちゃんと恋人としてみてくれないかな」
「えっ…?私は、仲影様を、」
「それだよ。本当はずっとしてほしいけど、流石にまだ無理だろうから。褥を共にするときくらい、かしこまらないで私を呼んでくれないかな」
私に口付けの雨を降らせながら、諭すように言う。もっと距離を縮めたいと、そういうことなのだろうか。でも、少し抵抗がある。なんといってもやはり私はまだまだ十五の若造で、仲影様は……そういえば、仲影様はいったいいくつなのだろうか。
「あの、こんな時に聞くことじゃないとは思うんですが」
「ん?何かな?」
「仲影様はお幾つなのですか……?」
ぷっ、と仲影様が噴き出した。大笑いしながら私の頭をぽんぽんと軽く叩く。
「くっ、はははっ、……ふつう褥でそれを聞くかい?」
「だから言ったじゃないですか!」
「……伯岐なら、而立と言えばわかるね?」
たしか、『論語』の言葉だ。
―――十有五にして学を志し、三十にして立ち、四十にして惑わず。
続きはあるが、つまり仲影様は三十ということか。
「はい……私と仲影様では、親子ほども歳が離れているのもあって、」
「呼び難いのは承知の上だが、駄目かな?」
首を傾げて懇願するかのように言うその言い方はとっても狡いと思う。こんなふうに頼まれたら断れない。私が心底惚れているのをわかってその上で言っているのだから性質が悪い。
「ほら伯岐、言って御覧?」
「……仲影」
途端にぱっと顔が明るくなってぎゅっと強く抱き締められる。嬉しそうに私の身体を撫でまわしている。そっと、仲影様の顔が首筋に近づいた。息がかかってくすぐったい。
ちくり、と痛みがはしる。首筋を強く吸われたらしい。こういったことに、私は興味がなかったからそれがどういった意味を表すのかをよく知らない。
「しるしを刻んだんだ。君が私のものであるという、ね」
私の心を読んだかのように、仲影様は楽しそうに告げた。そう言われると、そのしるしが愛おしく感じる。そっと撫でると、仲影様はさっと顔色を変えて私を寝台に組み敷いた。見上げた仲影様の顔は強く私を求めていることがありありとうかがえた。
「伯岐。あいしているよ」
「わたしも。仲影」
唇が重なり、やがて私と仲影様はひとつに重なった。
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