アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
容光
-
陽の光が窓から差し込んでいる。
仲影様が琵琶を弾いていた。明朗な音色は普段昼間はあまり外に出ることができない私の心を晴らしてくれる。目がかすんでふわりと一瞬辺りがわからなくなり、ごしごしと擦る。ふと琵琶の音色がやんで、仲影様が心配そうに私を見ていた。
「大丈夫かい?」
「はい……」
今のうちに沢山仲影様を見ておかないと。いずれ視力が失われる時が来ても、覚えていられるように。ぼうっと仲影様の端正な顔を眺めていると、口角がつり上がった。
「本当に私の欲を煽ってくれるね。見ているこっちがおかしくなりそうだ」
「っ……!」
「ふふっ、今夜もたっぷり可愛がってあげるから楽しみにしていなさい」
「え、その、あの……」
欲の籠った低い声がぞわぞわと私の背をくすぐる。また、あんな風に仲影様におかしくされてしまうのか。嫌ではないしむしろもっとしてほしいとも思ったが、それを思い切り声を出して言うのははしたない気がする。
「それは良いとして……目にいい薬を処方させるから、今日からきちんと飲みなさい」
「え……?」
「君の体質は日光に弱く視力もあまりよくないそうじゃないか」
「なんでそれを、知って……」
「全く、駄目だろう伯岐。私に何も言わないなんて」
知られていた、らしい。琵琶を壁にたてかけて、仲影様は私をそっと抱き締めてくれる。暖かい。ずっと焦がれていた愛情が求めずとも沢山与えられて、多幸感で頭がとろとろになる。覚えたてのそれがたくさん欲しくてたまらない。
仲影様がこくりと喉を上下させ、額に唇をくれた。柔らかく押し当てられるだけのそれなのにどうしてこうも心地いいのだろう。
「仲影様は、私の目が見えなくなったらどうしますか?」
「……好都合だね。君を外に出さない口実ができる。もし君の目が見えなくなったとしても、私が君に夢中なのは変わらないよ。いや、もっと酷くなるかもしれないね」
執着をありありと見せつける仲影様。変わったのは仲影様も一緒だと思う。少し、私に遠慮していた部分もあったから、こんなに欲望に素直で執着心を露にしてくれているのが嬉しい。私は仲影様のものだし、仲影様は私のものであってほしい。そんなことを思うくらい、私は貪欲になっていたらしい。
「苦い薬は、苦手です」
「良薬口に苦し、だよ。少しでも飲みやすいように工夫はさせるから。粉より丸薬のほうがいいだろう?」
確かに味が口いっぱいに広がる粉薬より一瞬で飲み込めば済む丸薬のほうがいい。頷くと、いい子だとでも言わんばかりに頭を優しく撫でられた。
「薬をちゃんと飲んだら、もっと褒めてあげるから」
「っはい……!」
随分、仲影様も私の扱いが慣れてきたらしい。褒められるという行為に、私はとみに弱い。嬉しくてうれしくて泣き出しそうになる。なんだか離れがたくて仲影様に私の方から抱きついた。
途端に頬を緩めて優しく甘やかしてくれる仲影様はくすくすと笑っている。
「……おやおや、今日は随分甘えんぼうさんだね?伯岐」
「だって……」
人生ではじめての恋人なのだ。私だって浮かれるに決まっている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 68