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「ねぇ、ローゼフ。ボクは助かるのかなぁ……」
ピノは弱々しい声で彼に尋ねた。その言葉に体を震わせて沈黙した。少年は明らかに弱り始めていた。その光景に彼は、本当のことが話せなかった。
「あ、あたり前だろ……!? 助かるに決まってる! お前をこんな所で死なせたりはしない! さっき私と一緒に帰るって約束しただろ…――!?」
震える声でそう答えるとピノは小さくニコリと微笑んだ。
「ピノ……!」
彼はその笑顔に胸の奥をかき乱された。
「ボクね……オーランドおじさんの、あの子を想う気持ちがわかるんだ…――」
「ピノ……?」
「おじさんはあの子を心から愛してたんだね……」
ピノがそのことを話すとローゼフは首を頷かせた。
「ああ、私もそうおもうよ……。ただその愛が深すぎたばかりに、彼はあのような狂気に走ってしまったんだ…――」
「うん、そうだね……。あの子もきっと、おじさんの愛をわかっていたとおもうよ……」
ピノはそう話すと壊れた彼女の方を見た。
「人形だから言葉は話せないけど、人形だから愛は返せないけど、でも自分に注がれている愛には気づいているとおもう……。あの子を見た時、ボクにはわかったんだ。あの子はあのおじさんに大事に愛されている人形だって…――」
「ピノ、お前にわかるのか……? 人形の気持ちが……?」
「うん……。彼らには言葉はないけど、気持ちは確かにあそこにあるんだ…――」
「――そうか。彼女は彼に愛されて幸せなドールだったんだな」
ローゼフはうつ向くとピノの小さな手を優しく握った。手に触れると段々と手が冷たくなっていくのを感じとった。あまりの辛さに目をそむけると、彼は空を見上げて天を憎んだ。
彼にとって少年との出会いは、かけがえのない大切な出会いだった。少年は彼の目の前に突然現れた。そして、孤独で寂しかった心を埋めてくれた少年に彼はいつしか次第に惹かれた。それと同時に、自分に甘えてなついてくる少年が可愛くてしょうがなかった。その少年が自分の目の前からまさに今、消えてしまいそうな儚い現実に、彼は天を憎まずにはいられなかった。唇を噛み締めて震える彼に、ピノは思い立ったように呟いた。
「ねえ、ローゼフ……。ボクはローゼフにとって役に立ったかな……?」
「何を言っているんだ急に……!?」
「聞いてローゼフ……」
「ピノ……?」
「ローゼフは一人ぼっちで寂しかったんだよね……?」
「ああ、そうだ…――」
「ローゼフはボクを誕生させる時、心の中で何を願ったの……?」
ピノはローゼフの顔をジッと見つめると手を握り返した。
「私は……」
彼は口を閉ざすとピノの顔を見つめた。そして、俯いた表情でポツリと自分の思いを口に出した。
「私はあの時、話し相手が欲しかったんだ……。そして一緒に笑って笑顔になれるような、そんなたった一人の友達が私は欲しかった…――!」
ローゼフはその言葉を口に出すと、堪えていた涙が瞳からスッと溢れ落ちた。
「だからあいつに人形の話を持ちかけられた時、私はウソでもいいからそう願った。そして、お前が私のもとに現れた…――。お前は優しくて明るくて思いやりがあるとても素直で可愛いドールだ。まさにお前は私が描いた人形だった……。はじめは戸惑ったが、お前のその無垢で純粋な心に私は強く惹かれたんだ。お前の愛が私を孤独から救ってくれた……。ありがとうピノ、お前に出会えて私は本当に幸せだった…――」
彼はピノの冷たい手を両手で優しく包むと、震えた声で感謝の言葉を伝えた。
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