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出逢い4
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トイレで本番ヤるなよ・・・
オレの最初の感想はそれだけだった。
喘ぎ声の持ち主は少し高い声ではあるが、男で間違いないだろう。
佐原がテンパったのもそれが大きいのだとわかる。この女好きは男女の絡みがここで行われていたら、自分も混ざりに行くタイプだ。
「あれって男同士ってことっすかね・・・マジでヤってますよね?」
好奇心なのか、鈴木の目は奇妙に欲を光らせていた。その目に吐き気を催しそうになったが、とりあえず他の客が来る前に、この場を何とかしなければならないだろう。
おれがそう考えてドアの閉まった個室へ足を向けた瞬間、一際大きな声が上がる。
2ラウンド目に突入されては困る。
足早に個室に近づき、少し強めに扉を叩いた。苛立ちも混ざっていたのだから仕方がない。
扉の向こうで、慌てふためく気配がしたが、知ったことじゃない。
更に強く扉を叩く。
気がつけば、入り口で固まっていたはずの鈴木がおれの真後ろに立っていた。好奇心に負けたのだろう。
「お客さーん、申し訳ありませーん」
正直、ここまですれば十分だとわかっていたが、一言顔を見て文句を言ってやりたい気分に駆られた。
しつこくノックを繰り返すと、ようやくゆっくりと扉が開いた。
現れたのは、明らかに情事の後の潤んだ瞳と火照った顔を隠そうともしない、小柄な男。相手の男は隠れてるのか、どうでもいいが。
嫌悪感が隠しきれなかった。
別にどこでヤろうと本人の勝手だし、おれには関係ないはずなのに、昼間に亮のことを想っていた純粋な気持ちが汚されたような苛立ちを覚えていた。
「他のお客様のご迷惑になりますので、どうぞよそでやってください、お客さん」
我ながらトゲのある言い方だ。
それも予測していたのか、男は全く動じなかった。
「すみませーん、こっちも商売なんで。でも、気を付けますねー」
にこやかに返答して、おれと鈴木に一枚ずつカードのようなものを押し付けてきた。
コイツ・・・“売り”かよ・・・
一気に心が冷えた。
「よかったら、ご指名してくださいねー。・・・天国、連れていきますよ?」
後ろから、鈴木がごくっと唾を飲み込む音が聞こえてきたが、おれは吐き気がしそうだった。体を売ること自体には軽蔑はしないが、目の前の男の値踏みするような不躾な視線は耐えられるものではなかった。
おれはカードを見ることもなく、拳で握り潰してトイレのゴミ箱に投げ捨ててその場を去った。
こんな。最低な出逢いがおれの人生を変えていくとは思いもせずに。
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