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平穏3
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それから、ポツリポツリとお互いのことなどを話始めた。
特に突っ込んだ話をした訳じゃなくて、年齢や職業とか、好きなものとか・・・
年齢が俺より歳上なのはわかっていたが、笑った顔が結構幼く見えて、5歳も離れているなんて思えなかった。
敬語とか使った方がいいのか、そもそも何て呼べばいいんだ?と距離感がつかめずにいた俺に、また子どものような笑顔で、「おれのことはまさと、でいーよ」と言ってくる。
時折妙に鋭く俺の考えてることがわかっているかのような言葉が飛び出す。
その度に、なんだか収まりが悪いような居心地の悪さを感じる。
なんなんだろ、この感じ。
自分のことを松原純だと自己紹介したときに、八嶋真聖と殴り書きされた横に俺も自分の名前を書いていて、二つ並んだ名前の書かれた紙をぼんやり眺める。
改めて見ても、違和感だ。
まさとの名前じゃなくて、俺の名前が。“純”だなんて、似合わなくて涙が出そうだ。
偽名を使えばよかったか、後悔したがもう遅い。
「おれもじゅん、って呼んでいいか?」
そう尋ねられて頷けば、「いい名前だな」なんて言われて、それが嫌みとかじゃなくて本心から言ってくれているのはわかったのに、胸が苦しくなったから。
まさとは、俺の売りのこととか一切聞いてこなかった。
知らずに助けたのか、となんとなく安心していたら。
「田中から電話あったぞ。しばらく売りは休めって」
と、まさとから言われて正直絶句した。
知られていたのも何故かショックだったし、田中とまさとに接触があったことも想像すらしていなかったからかショックが大きかった。
「ありがと・・・」
動揺のあまり、掠れる声に自分でも驚いたのに、まさとは気にもしていない様子だった。変なとこで鋭いのに普段は鈍感なんだな、とまさとを見ながら思う。
「ゆっくり休んで体ちゃんと治さなきゃな」
くしゃっと髪の毛を撫でながら、まさとが笑う。その顔には売りの俺に対する軽蔑の色は浮かんでいなくて、それに安心しながら頷いていた。
───変なの、今まで誰に何言われても気にしたことなかったのに。
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