アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
戸惑い3
-
聞けなかったことはまだあった。
あの日のこと。
あの時暴行を加えていた三人の内、一人だけは確実に純に執着心を見せていた。
おれが警察を呼んだことを知らせると、他の二人は動揺してすぐに逃げようとしたのに、一人は憎々しげにおれを睨んだ後、止めの一撃とばかりに純に蹴りを入れて、他の二人が逃げることを急かしているのに、純の耳元で何かを囁いてからようやく逃げていったのだ。
あれは、ただの通りすがりや一見の客にやられたという雰囲気ではなかった。
おれの家にいるうちはいい。だけど体が完全に治ってここを出ていったら?あの男がまたやって来るんじゃないのか?
そう思うと、あの男との関係を問い質したい気持ちと、このまま純におれの家にいてほしい気持ち、どっちが本音なのかわからなくなる。そして結局なにも聞けないのだ。
「・・・まさと?」
純の声で、迷路に迷いこんでいた思考から浮上する。
そうだった。まだ肋骨が折れたままの純の頭を拭いて乾かしてる途中だった。
少し前までは頭を洗うのもおれがやっていたのだが、少しの時間なら腕を上げるのも痛みがないと、純が自分ですると言い出していた。けれど乾かすのはずっと両手を上げなければならないため、おれが手伝っている。
「わり、ぼーっとしてたわ。痛くなかったか?」
純の髪の毛はすでにほぼ乾いていてしかも、ずっとタオルで擦られ続けたためか、ところどころ変な癖がついてしまっていた。
それを手ぐしで丁寧に直してやっていると、くすぐったいような顔で少し首をすくめながらも、純はおれの手を受け入れていた。
その顔が、野良猫が怯えながらも人間が首筋を撫でるのを享受しているようで、手懐けた喜びと満足感を得る。
純に確認できないことだけじゃない。おれ自身、自分の気持ちがよくわからない。どうして純に対してこんな気持ちになるのか、亮への想いとは全く違うこの気持ちに、なんと名前をつけるべきなのか、全くわからなかったのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
52 / 118