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接触3
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亮に癒されることを求めていたのに、飲み会が終わってみれば、結局はただ自分との距離を思い知らされただけだった。
独りよがりだな・・・
亮と会えば、何かが変わるような気がしていた自分が情けなくなって、帰り道の途中で酔いは抜けてしまう。
おれを待ち構えていたは自己嫌悪と、あの朝比奈教授とやらへのガキのような嫉妬と、亮への想い。どれもが、もやもやとしたスッキリしないものばかりだった。
「ただいま・・・」
時刻は午後11時27分。
この辺りでは、深夜とは呼べない時間帯だが、同居人のことを考えれば、自然と声を潜めてしまう。
純は寝ているのだろうか。寝ていてほしい、そう願う。
あの、何を考えているのかわからない、丸く大きな瞳でこちらを見られたくなかった。
純粋の純。最初に名前を聞いたときは、売りの時の様子が頭に浮かんで、なんて字だよ、とか思っていたが、口ではイイ名前だな、とか適当なことを言っていた。
でも、純は、純粋というか、変にスレていない。
挨拶はきちんとするし、一人で飯を食うときも、毎回必ず前後に手を合わせて『いただきます』『ごちそうさまでした』と言っているのも知っていた。
育ちがいいのだろうか、そんな風に思ったこともあったが、何か違和感もあった。
違和感はそれだけでなくて、そもそもなぜ売りをしているのか、それが最大の謎だった。
金に困っているのか、と思っていたが、売りができないからと言って焦ったりイライラする様子もない。むしろ、おれに世話になった分、とか言って大金を押し付けようとしてくるくらいで。それに借金のカタに売りをしているのだとしたら、あの元締めの田中とやらが、早く仕事を再開しろとうるさく言うだろうし。
おれの作った飯を旨そうに食べている姿を見ていると、まるであの日ファミレスのトイレで開き直った男と同一人物だと思えない。
───なんなんだろう、この違いは。
この時のおれには、純の最大の謎が、おれを長く苦しめることになるなんて、思ってもいなかった。
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