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紙切れ3
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残された紙切れには、メールアドレスが書かれているだけ。
おれの一方的な思いを、象徴するかのようだった。
お前は、知りたいと思ってくれなかったんだな、おれのアドレスを。
しばらくは、その紙切れを眺めるだけだった。
もしかしたら、いつかは伝わるかもしれないと思っていたのに、結局は伝わる前に出ていってしまったことの失望感と、最後の純の言葉がどうしても受け入れられなかったからだ。
薄々は何かあるのだろう、そんな予感はしていた。
売りの時のアイツとここで生活していた時の純との違い、そしてセックスの時のあの切羽詰まった感じ。
セックス依存、そんな言葉が頭をよぎる。
否定したかったが、そう考えれば納得できることは多くて。
そして同時に、純には、そんな自分の症状に対して全く自覚がないことも、わかってしまう。ただ、セックスしないと眠れないと思っているんだろう。
何を、見てきたんだ、おれは。
知らないことが多いのはわかっていた。それすらも、そのうち聞けばいいと後回しにしていた。
それでも、あれだけ体を重ねたのに、どうして気がつかなかったのか、それが果てしなくおれを落ち込ませる。
思い返せば、思い当たることは多すぎて、頭を抱えるしかない。
浮かれていた、溺れていた、周りが見えなくなっていた、どれも自分に当てはまるけど、それをいいわけにするのは、狡すぎるだろう。
ただ、おれは純のことを何も見ていなかっただけなんだ。
気がつけば、おれの手のひらの中で、純の残した紙切れは、クシャクシャになっていた。
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