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感情⑥
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「俺は…」
佐木の唇が小さく動く。
その時、大きな風が吹いた。
周りの木々を揺らし、2人の間を通り抜けていく。心地良い自然の出す音が、佐木の声を遮った。
急に吹き荒れる風に、髪が乱れる。
涼しいのは涼しいのだが、砂ぼこりがまい、思わず咳き込んでしまう。
「…なんだ、急に。風、つよっ」
「う、うん」
「台風、来てるんだっけ」
「…そうなの?」
「知らねえ」
「…そっか」
なんて言おうとしたのだろう。風に邪魔されて話を逸らされてしまった。
突如吹いた謎の風が過ぎ去ったあと、残ったのは気まずい空気のみ。
すると、佐木が何か思い出したようにあっ、と漏らした。
なんだろう。さっきの続きかもしれない。なんて、ちょっと期待してしまう。
ーーーが。
そんな妄想すぐに崩れ落ちた。
「ゴム。」
「え?」
「買ってきたやつ。渡して」
「…あぁ、うん」
何を期待してるんだと、心の中で自分をしかった。
そう言えばまだ渡していなかったなぁ。
袋の中の箱を渡す。
そもそもこれメインでここに呼び出されたんだった。浮かれまくってて恥ずかしい。
佐木は箱を受け取るとすぐ、倉橋に背を向けて歩き出した。
「か、帰るの??」
「帰んねえよ。座るだけ」
そしてそのままベンチに腰掛けた後、
ぶっきらぼうに言い放った。
「食うんだろ。うまい棒」
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