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振動②
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「風邪なの?学校来ないから、僕、心配してたんだっ」
倉橋の言葉に、そんな奴、心配する必要無いだろと百城が小声で言う。
しかし倉橋はそれには気づかず、電話口に更に話しかける。
「元気…なんだよね?」
『……‥…‥‥……。』
応答がない。よっぽど具合いでも悪いのだろうか。
「熱とか、あるの??ご飯は食べた??」
大好きな佐木と、電話で繋がっている。そう思うと嬉しくてつい質問ばかりしてしまう。
「御見舞いとか、行ったら迷惑…かな」
1人頬を赤く染めながら勇気をだして聞いてみるが、自信が無くて、自然と語尾が小さくなる。
淡い期待を抱きながら佐木の返事を待つ。
ーーが。
いくら話しかけても応答がない。
これは多分、家には来るなというサインだろう。
やっぱりそうだよね。僕が行ったらときっと迷惑だ。それに気付いてあわてて前言撤回した。
「ご、ゴメン…迷惑だよね!聞かなかった事にして?」
「あ、明日は、くるんだよね、学校」
「…サキくん?」
あまりにも返答がないので、切れちゃったのかもと画面を確認するが、そこには《通話中》の文字がある。
「…もしもし?聞こえてる?」
「おかしいなぁ。電波悪いのかなぁ」
その様子を見て百城が、どうしたの、と顔を覗きこんでくる。
「電話、繋がってるはずなのに、全然返事がないんだ」
どうしてだろう。
胸がザワザワする。
「サキくん、もしかして何か事件に巻き込まれたんじゃ…。」そう思うと全身の熱がサーッと引いていくような感覚に見舞われる。
佐木は、あんな性格だし、誰かしら恨みを持たれていてもおかしくない。
「どうしよう、どうしよう!」
誘拐されたのかも!と、あたふたする倉橋に、百城は落ち着いて、と声をかけ電話を代わるように言った。
それに従って、急いで携帯を百城に渡す。
受け取った百城は、落ち着いた声で話しだした。
「…もしもし。佐木?それとも、佐木の知り合いの方ですか?」
どうやら返事がないようで、首を傾げて倉橋に、アイコンタクトをとる。
「佐木に何かあったんでしょうか?学校に来てないようなので心配してたんです。」
相手が誰かも分からない。なるべく挑発しないように静かに落ち着いた口調で語りかける百城。
そして倉橋は、それを涙目になりながら心配そうに見つめる。
「あのう、佐木に代わっていただけないでしょうか?」
百城が言った、そのとき。
〈ツーー、ツーー、〉
電話のきれる音がした。
「……ごめん、切られちゃった」
百城の申し訳なさそうな声と、通話終了を告げる、携帯の電子音が虚しく耳に響いた。
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