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ゆうやけ②
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人懐っこく明るい母親を持ったもので、こういう事はよくある。
見ず知らずの人とも会って話せばものの五分ほどで打ち解け、そのまま一緒に遊びにいったり、近所で一番怖いと有名だったおじいさんとは何故かよく『あっち向いてホイ』をやっていた。
そして負けた方には罰ゲームと言い、ありえないくらいマズイ青汁をそのおじいさんに飲ませていた。おじいさんは怒ることもなく、むしろ遊び相手ができて満更でもなさそうだった。
このように、とにかく物怖じしない性格で、僕より友達を作るのが何百倍も上手い。
親子だし、顔はどことなく似ていても性格は全く似ておらず、人気者の母親を持って嬉しいと思う反面、羨ましいと思うことの方が多かった。
「そっかぁ。泊まるのかぁ…」
何かあるわけでは無いのに、心のどこかで何かを期待している。同じ部屋で寝るのだろうか。更には同じベットで…いやいや、そんなはずはないか。もしそうなれば僕はきっと興奮して眠れない夜を過ごすことになるだろう。
一人脳内妄想に浸る僕を良く思わないのか、佐木くんは冷ややかな視線を送る。
「嫌なのかよ」
「嫌じゃないよ」
「美代子さんは喜んでたぞ」
「ぼ、僕だって……!」
本当に嬉しい。そう言おうとした。
けれどそのまま飲み込んでしまった。
ーー嬉しい
それが僕の本心だし何も間違ってなんかないのに。それなのに何故か心は靄がかかったように曇っていた。
《友達》として嬉しい。
そう思えたのならこんな気持ちにはならなかったはずだ。
僕の嬉しいはそんな純粋なものじゃない。
恋っていうのは、こんなに汚い物なんだろうか。もし自分が好きになったのが、男じゃなくて女の子ならもっと素直に喜べたろうに。
叶わない恋のほうが燃えるだなんて誰かが言っていたけれど、
許されない恋のほうが強い絆で結ばれるんだと言っていたけれど。
本当にそうだろうか。
誰からも理解されない想いが募る一方で、好きなものを好きだと言えず、届きそうで届かない幸せに手を伸ばすことも無く、ただ一人願うだけ。
神様は忙しいんだ。ちっぽけな僕の願いなんて聞き入れたりしない。
叶わない恋なら、許されない恋なら。
諦める他、ないじゃないか。
「サキくんが来てくれて嬉しいよ」
僕は嘘つきだ。
「本当に?」
「本当。」
針が刺さるように胸がチクっと痛んだ。
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