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不仲⑥
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ここまでくると、自分が何に対して怒りを覚えているのか、よく分からなくなってしまった。
訳のわからない感情のまま、屋上へと続く階段を上り終える。鍵のかかった扉を目の前にくそっと舌打ちしながらズボンのポケットから針金を取り出し鍵穴に差し込んだ。それから手の感覚だけで施錠を解いていく。
いわゆる、ピッキングという奴だ。
悪いことをしているという自覚はなかった。
凍える程寒い夜。家から追い出され寒くて寒くて死にそうだった時、悴む手で、自分の命を守るために覚えた技だったから。
鍵なんか持たなくともマイナスドライバーと針金さえあれば解錠できた。
この学校の屋上へと繋がる扉は南京錠で鍵掛かっており、マイナスドライバーは無くても、針金のみでいとも簡単に開けられる。
ものの数分ほどでカチャリと音が聞こえ解錠出来た。
扉を開け、眩しい光に目を細めながら大きく息を吸う。
そうして酸素をおもいっきりとりこむと、生きている、という実感が体中に流れこんでくる。
体に浴びる陽の光が眠気を誘い、今朝は早起きだった事を思い出させる。授業に出るのは面倒臭い。今から寝たって誰も咎めないだろう。
日陰でうつ伏せに寝転び、カバンに顎を乗せ枕がわりにして瞼を閉じた。
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