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-黒澤side6-
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数学の授業を終え、クラスメイトたちが個々に席を立つ中、玉置だけは一人で席に座って窓の外をぼんやりと眺めていた。騒がしい教室の中でも相変わらず儚げな雰囲気を漂わせて、ある意味浮いた存在だ。なんとなく人とは違うオーラを放っているため、クラスメイトたちが声をかけづらいというのもわからなくはないなと思った。玉置の机の上には小さめのスケッチブックが置かれており、何かの絵を描きかけているようだった。
「玉置、今ちょっといいか?」
そう声をかけると相当ぼんやりとしていたのか、かなりの大リアクションでスケッチブックを両手で隠し、顔を真っ赤にさせた。そんなあからさまな行動をされてしまうと正直見てみたくなってしまうが…自分の絵を見られるのが恥ずかしいのだろうとここは察して、絵については触れないでおくことにした。
「部活もあるのに申し訳ないが…今日の放課後、二者面談だから忘れずに職員室へ来て欲しい。」
「ふふっ、忘れてないですよ。必ず行きますね。」
相変わらず優しい笑顔で俺を見上げると、結びきれていない髪の毛をそっと耳にかけてなんだか色っぽく見えた。…いかん、男子生徒相手に俺は何を考えてんだか。
「おんちゃん先生、お酒とタバコ辞めたんですね…すごく心配だったので嬉しいです。」
「あ、ああやっぱりみんな気がつくんだな…朝からそれで彼女できたのかー?とか言われて大騒ぎだよ全く。まぁありがとな…これからは気を付けるよ。」
騒がしい教室の中でも、くすっと笑う玉置の声が耳に響いて、その瞬間に心臓が跳ね上がった。…何だこれ、体調でも悪いのだろうか。そんなことよりも藤岡先生の伝言を早く伝えないと。
「あ、あと…。藤岡先生が昼休み入ったらすぐ部屋に来いって言ってたぞ。」
胸の高鳴りを誤魔化すように頭を掻きながら何気なく藤岡先生の話題に変えると、玉置の顔色が一瞬青ざめたような気がした。…だが、すぐにいつもの優しい笑顔に変わって何事もなかったかのように話を続けた。
「…そう、ですか。わざわざありがとうございます。今度の展覧会の話かなぁ~。」
「藤岡先生のか?」
「いいえ、美術部員のですよ。僕の絵が展覧会に飾られることになったので…その事かもしれません。」
先程の表情とは一変、嬉しそうに話をしてくれる玉置は何と言うか…本当に謎めいていて何を考えているのかわからない。表情豊かな筈なのに、心の底では何を考えているのか全く予測ができないのだ。だけど、先程の表情を見逃さなかった俺は、どうしても納得することができなかった。
…今日こそは何がなんでも真相を暴くんだ。
「じゃ、放課後待ってるぞ。」
「はいっ。お仕事頑張って下さい、おんちゃん先生。」
その言葉だけであと十年ほど頑張れそうだと心の中で考えながら、返事代わりに手に持っていた出席簿で玉置の頭をポンポンと叩いた。
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