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お父様の愛 北村娘side
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「お前のことを愛しているから、じゃ」
そう言われたときの私の顔は、相当な間抜けヅラだったと思う。
意味がわからず、ただ口をぽかんと開けてお父様を見上げることしかできなかった。
「ワシはな、お前を愛しているからこそ…お前を危険に晒したくないと思ったのじゃ。
キタムラを継ぐというのは、危険の矢面に立つということじゃからな…、ワシは継いで欲しくはない。
でも、お前が後を継ぎたがっているのも分かっておった。
だから今までハッキリとは後を継がせないというのは言えなかったのじゃ」
お父様は、晩年の娘だからかのぅ、と溜息をつく。
「だからお前の意識がキタムラを継がない方向に行けば良いと思って、奏里ちゃんをいつも引き合いに出していたんじゃが…。
完全なる失敗だったようじゃ。
娘を寂しがらせるなんて、父親失格かの」
なんて、
なんてことだろう。
呆然として止まっていた涙が、また溢れ始める。
『城川のとこの奏里ちゃんがなあ、偉いんだよ!家業を手伝って、しかも優秀なことこの上ない…!特に事務なんかはそこでずっと仕事してた組員並で…』
それは、キタムラと無関係にはならないまでも、事務仕事ならば危険ではないだろうという父の愛。
『城川のとこの奏里ちゃんがなあ、模試で一番を取ってなあ…!』
それは、勉学に励めばキタムラではない道もあるという父の愛。
『城川のとこの奏里ちゃんが…』
『城川のとこの奏里ちゃんが…』
それは、後を継がないで欲しいという、父の愛。
「わ、私は!
キタムラを継ぎたかったわけではないです」
「…そうなのか?」
「お、お父様に…愛して欲しかった…っ
そのために、後を継ごうと思ったんです…」
「…なんと、」
「でも私は、愛されていたのですね…」
「当たり前じゃ。
…ただ、どう伝えていいのか、わからなかった。
すまんかったのぅ…」
「いいえ、私も悪かったのですっ
もう私は何もいりません…
キタムラも、お父様のお望み通り事務にまわります」
「…いいのか?」
「…えぇ、本当に欲しいものは手に入りましたから。
お父様、ありがとう…っ」
おいおい泣く私を、お父様と藤堂と千夏は私が泣き止むまで優しく見守ってくれていた。
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