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千夏の悲しみ
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「はっ、はいっ!誰ですか?」
慌てて涙を擦って拭い、声を出す。
扉が開くと、顔をのぞかせたのは千夏、ちぃだった。
「お見舞いに来たよーっ、と!」
ちぃは僕と目を合わせると、にこっと笑った。
きっと泣いてたことに気づいてる。
でも敢えて触れないのは、ちぃの優しさだと思った。
「いらっしゃい!来てくれてありがとう、
あ!色々とお礼も言ってなかったよね!
僕を助けるの、手伝ってくれたんだよね?
奏里からきいた…ほんとにありがとう」
「ううん…むしろごめんね。
私、北村を止められなかった。
気付いても良さそうなものなのに…」
「ちぃのせいじゃないよっ!
とにかく、本当に感謝してるんだ…ありがと」
お見舞いの品をもらって、ふぅ、と一息つく。
こうして少しでも隙あらば考えてしまうのは、やっぱり晴くんのことだった。
「…浮かない顔してるね」
声をかけられてちぃの方に顔を向けると、今度は優しい笑みを浮かべて僕のことを見ていた。
「そう、かなぁ…」
なんでみんな、わかっちゃうんだろ。
目を伏せて力なく笑うと、ふっとちぃが笑ったような気がした。
「…ねぇ、私も最近、ヘコむことがあったんだけど、きいてくれる?」
「もちろん」
頷かないわけもなく、ちぃの次の言葉を待った。
「私ね、…失恋したんだ」
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