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バタバタ帰る自分の足音。ドンドン五月蝿い心臓の音。
まだ身体は熱を持ったまま。
「くそ……………高槻のアホ」
「どした、大丈夫…?」
後ろから突然抱きしめられる。
俺は期待した。
「たかつ……………友かよ」
「あらら、僕じゃ不満?」
そりゃそうだろ。俺はついさっき高槻から言い逃げしてきたんだ。
ヘタレなあいつがここにすぐ来られるかなんて考えれば分かる話。
友だって気づいてめちゃくちゃ落胆してる自分。俺は自分で思ってる以上に高槻を好きで、信頼して、あいつにも期待してるらしい。
嫌だなぁ、俺ばっかり好きみたいだ。
「高槻となんかあった?」
半分友のせいだけどな、って思ったけど、結局言い出したのは俺だから、俺が悪いのかな。
「別に。なんもねーよ」
言葉通り。なにもなかった。
「馬鹿だな。ずっと一緒に居るんだ、そんな嘘すぐ分かるよ」
「うそじゃない」
「うそ。だってたぁ今にも泣きそうだもん」
え………?なんで泣きそうな顔なんかしてんだよ俺。
なにも泣くようなことないだろ?
「してない…っ、ふ、ぐす、」
「意地っ張りなんだから〜」
そう言って友は俺を優しく抱きしめた。
そんなつもりさらさら無かったのに、友に抱きしめられると口から勝手に言葉がボロボロ零れ出す。
「俺ばっかり、っ、あいつのこと好きみたいで、もっやだ…っ」
「こらこら。別にそれはダメなことじゃないだろ?」
「そ、だけどっ、だって、っ、あいつ、」
俺は不安なんだ。
本当は高槻が俺に興味がないんじゃないかって。本当に俺のことが好きなのかって。
「『俺に手だしてくれない』って?」
「っん、」
友は嗚咽混じりでうまく話せない俺をなだめて、ゆっくり話を聞いてくれる。
おかげでいつもよりも素直に話せている気がする。
俺と高槻は一緒にいて何回かそういう雰囲気にもなった。だけどそんな時ことごとく高槻が雰囲気を崩していくのだ。
「そーだなー、でもさ、Hするだけが恋人ってわけじゃないだろ?」
「でも、っ、」
俺だって、身体の関係だけがすべてだなんて思わないけど、だけど、
「あ。もしかして、この間俺が言ったこと気にしてる?」
「うん、」
俺が頷くと友は頭を抱えて俺に謝ってきた。
「〜〜〜〜ごめんっ、ほんっとごめん。あの話な、たぶん高槻には当てはまらないよ」
「…っ、へ?」
「んー、だってさ、高槻がさ、女遊びするような人に見える?」
俺は首を横に振る。
女遊びはおろか、女友達すらいるか不明なオタク野郎で、2次元女の子にしか高槻は興味がないと以前言っていた。
「だろう?俺が言ってたのは、なんていうか、一般のっていうと言い方悪いんだけど、女の子好きー!っていう人たちのことなのね、あれは。例えば僕とかさ。」
……………………お前の事かよ!
「だからさ、高槻が全然たぁに手出してこないとしても、安心していいと思うけどな〜。」
「ほんとに?」
「うん。だってあっちもお前も男好きになったなんて初めてなんじゃないの?」
「…そう、だけど」
「だったら戸惑って当たり前だよ。特に高槻童貞そうだし、ビビってるんだよ、きっとね」
にこっと最高級の笑顔+ウインクをして友は軽く高槻をdisりながら言った。
確かに、俺も初めは戸惑ったけど。
そうかな、そうなのかな、そうだったらいいな………
高槻には趣味があって、優先順位俺よりもはそっちが先なのかもしれない。けどやっぱり俺はもっと高槻に触りたいし、触って欲しい。わがままかな。
っていうか俺すげえ女々しいな…
「…………俺、今めちゃくちゃかっこ悪い」
高槻を好きになってから俺はよく泣くようになった。心が弱くなっているし、普段通りなんでもないことですぐに悩むようになった。俺の世界が高槻を中心に回るようになった。
「もー何いってんの。今はいつも以上に可愛いよ。恋愛に悩んでる、あの尊がだよ?僕にとったら可愛くて仕方ない。よかったね、好きな人が出来て。大切な人が増えるってとても幸せなことだよ?
幸せが共有できるって最高の喜びじゃない?その人といるだけで、気持ちが上がる、充実感に満たされる。不思議だよね。
僕はすごく嬉しい。尊がちゃんと人間らしくしているのが。好きな人が居て、大切に思ってくれる人が居て、その人ために泣いたり、悩んだりしてさ…。昔のお前じゃ想像もつかないことばかりだよ。
本当に良かったね、高槻と出会えて。」
確かにその通りだと思った。
俺は幸せ者だ。
友が優しく俺の頬を撫でる。昔からの癖でこうされると必ず笑ってしまう。
「さ、笑って?元気出して、お前たちはお前たちのペースで進めばいい。周りなんて気にしないでさ、」
「うん」
「もう大丈夫かな、」
「うん、ありがとう助かった」
「あらららら、珍しい。たぁがちゃんとありがとうって言うなんて♡」
折角いいこと言ってたのに、またいつも通りな友に戻ってしまった。
「うるさい」
「あはっ♡可愛いなぁもう♡」
巨体でぎゅうぎゅう抱き締められて痛いというより、苦しい。
……ん?なんかこいつの体型、すごいしっくりくる。
すっと友の腰に手を回す。
やっぱり…………………
「デレ期か!!!」
「馬鹿、お前身長いくつだっけ?」
「181だよ?」
なるほど。ほぼ高槻と変わらないな。
だからか。
すごく落ち着く。
ぎゅーーっと寂しさを紛らわすように友に抱きつく。
そしたら友も昔みたいに背中をなでて抱き返してくれる。
高槻とはまた別の安心感。
家族ってこんな感じ。
「か、神田くん!!!!!セックスしよう!!!!!!!」
突然部屋のドアが開き、高槻が叫んだ。
「神田くんセックスしよう!!!!!」
「に、2回も言うな!!!!」
「よかったじゃん?」
にやにやしながら耳元で友がつぶやく。恥ずかしすぎる。
「今からえっちするんだ?へぇ?」
覗きに行こ〜っと冗談交じりに友が言う。だが俺には半分本気に聞こえてならない。
本当に高槻はタイミングが悪い男だ。
好きになったものはしょうがない。
そんで、俺の昔の頃はまた別の機会に。
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