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こいのうた
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いよいよ俺が初主演を果たした映画が公開を迎えた。
評判は上々、ありがたいことに事務所のホームページのファンサイトには、映画を観た方からの感動しました!や演技が素敵でした、など嬉しいコメントが続々と届いている。
そんな声が、自信と力になる。
「篤、食べよ」
「うん」
二人で作った晩ご飯を並べて、席につく。
奏は映画が公開された当日、自分でチケットを買って、映画を観に行ってくれた。
仕事から帰ってきたら映画のパンフレットが置いてあってびっくりした。
恋人でもあるけど、お前のファンでもあるからさ、自分でちゃんとチケット買って観に行きたかったんだ。
映画、すんげぇ良かった。
ってはにかみながら言った奏を、俺はぎゅうっと抱きしめた。
ほんと、大好き。
思い出しながら思わずにんまり笑って奏を見ていたら、奏が首を傾げた。
「ん?なんかついてるか?」
「んーん。好きだなーって」
「……んだよ、いきなり」
ふいって目をそらしてご飯を口に頬張る奏。
うっすら耳が赤くなってる。
そんな風に照れる奏がかわいくて、ますますに顔がにやけてしまう。
一緒にお風呂に入って、いちゃいちゃいして。
のぼせる前にお風呂から出て、部屋のベッドでまたいちゃいちゃして。
そして今日もぎゅっと腕に奏を閉じ込める。
疲れたのかすやすやと夢の中の奏の髪を撫でながら、俺はふいに今日届いたファンからのコメント思い出した。
『映画の歌が、本当に素敵でした。一途に思う歌詞に、すごく胸を打たれました。そんなふうに想われてみたいと、そう思ってしまうほど。まさに、こいのうた、ですね』
奏の想いがいっぱいつまった、俺にくれたラブレター。
その事実を聞いてから、俺はこの歌がもっともっと大事になった。
そして、奏の想いにきゅうっと胸がつまった。
どんな想いで、この歌を作ってくれたのか。
どれだけ、想ってくれてたのか。
そんなことを考えて、しみじみ思ったんだ。
ーーあぁ、なんて愛しいんだろうって。
歌詞を見つめ直して、その言葉のひとつひとつが、胸にズシンときた。
俺がまだ奏を知らない頃から、奏の瞳には俺が映っていた。
それがたまらなく嬉しかった。
だけど、俺の気持ちも、今じゃ奏に負けてない。
こんなにひとりの人を想うなんて、初めてなんだ。
奏がそこにいてくれるだけで、頑張れる俺がいる。
奏が笑ってくれると、すごくすごく嬉しいんだ。
こんな俺の想いを、奏みたいに伝えたい。
だけど奏みたく、ラブレターなんて書ける文才なんかないから。
だから俺は毎日、言葉で伝えるよ。
奏が、大好きって。
ありふれた言葉かもしんないけど、でも込める気持ちは、誰にも負けないから。
「ん……」
腕の中にいる奏が身じろぎして、そしてスリスリとすり寄ってくる。
「ふ……かわい」
サラサラな髪にちゅっとキスを落とすと、眠るために目を閉じた。
奏。
奏を好きになって、そして恋人になれて。
俺、最高に幸せなんだ。
腕の中にある優しいぬくもりを感じながら、今日も安らかな眠りについた。
END
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