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第1章: ばいばい、悪夢さん(1/2)
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【side*葵】
「―…ッ」
寒い部屋。額にうっすら浮かぶ汗。
ガタガタと大きく身体が震える。
隣で眠るけーくんを見た瞬間、ぶわっと涙が溢れてきた。
「…っけ、くん…っ」
けーくんの着るスウェットをぎゅっと強く握り、大きな胸に顔を埋める。
トクン トクン トクン・・・
心地よい一定のリズム。けーくんの体温。
少しずつだけど…落ち着いてくるのが分かる。
最近、また見始めた怖い夢―――。
僕を鬼のような形相で睨む…母親。
その隣には、義理の父親。
『 ア ナ タ ハ 、 ウ チ ノ コ ジ ャ ナ イ 』
夢だとは思えないくらいの、冷たくて心まで冷えわたっていくほどの声色だった。
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:
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。
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・
「…んん、あ…おぃ?」
「けーく…っ」
ゆっくり目を開けたけーくん。
眉間にしわを寄せてぼーっと僕のことを見ている。
心配かけまいとさっとパジャマの裾で涙を拭い笑みをつくってみせる。
「どした…目、覚めちゃったの?」
「ん、ちょっとね…」
へへっと何もなかったように、いつもみたいに笑ってみせる。
けーくんはしばらく僕を見つめて、優しく髪を撫でながら言った。
「…泣いてたでしょ? ココ、濡れてる」
片方の手で、胸元を指差しながら。
けーくんにはすべてお見通しみたいだ。
大きな手が髪から頬へ移動して、綺麗な指先が目尻へと触れる。
擦ったせいかヒリヒリする目元に冷たい指先が触れるたび、なんだか苦しくなる。
だけどそれ以上に心地いい。
「けー…くん?」
「もう、泣かないようにっておまじないしといた」
「…おまじない?」
「うん、おまじない」
「葵がもう怖い夢で泣かないように」
けーくんはへラッと笑みを浮かべれば、ぎゅうって強く抱きしめてくれた。
大きくてがっしりした腕に包まれると眠くなってしまう。
とっても安心できるんだ。
温かくて、温かくて……
人の温かさを知らなかった分、余計に気持ちいい。
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