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夏といえば!
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ずっと考えているのはその人を諦めるべきだということ。
そして、愛おしいということ
「海に行こう!」
「…」
里見は資料を揃えて鞄に入れている所だった。
「なぁ、海に行こう!」
無視してもついてくるので、里見ははっきりわかるように冷たい目で見下ろした。
「なぁなぁ。」
大学は夏休みに入っているが、里見みたいに資料を借りに来たりする学生がちらほらいた。
「なぁ、海行こう!」
鞄を肩にかけて歩き出そうとするとその前を遮った。
「なぁ、海に…」
「楷、通してくれ。」
里見はため息をついて、手で追い払う仕草をした。
「えっと…海に…」
「それは聞いた。答えはわかっているだろう?」
ずいっと里見が顔を近づけると楷はびっくりしたように顔を赤くした。
「あんまり近づくなよ。惚れるだろう…」
楷は後ろに下がった。
「…うん、そうだな。じゃあ近づくな。」
里見は手を上げて通り過ぎようとした。
「待って。海行こうってば。」
楷は走って里見に回り込んだ。
里見はため息をついて、ばんっと横の壁に手をついた。
「…行かない!」
「なんで!?」
楷の素っ頓狂な声に里見は目を見開いた。
「な、なんでって、、、なんで俺が行かなきゃいけないんだよ!」
「だって女の子たちに勝谷連れてくからってことで、OKもらったんだもん!お前が行かなきゃ、水着ガール見れないじゃん!」
里見はあんぐり口を開けて、くるりと楷に背を向けた。
「ちょ…ちょっと待ってよ!」
里見の鞄が強い力で後ろに引っ張られたが、決して振り向かず、歩き出した。
ザワザワと周りの人が見ているのがわかる。
「ねぇってば。一生のお願い!」
里見はその言葉でハッとして、振り返った。
「お前…この前も一生のお願いで、俺に病院行かせただろう?」
(まぁ…あれはあれで俺が行けてよかったけど…)
「あっ….」
楷は鞄から手を離した。
里見はふふんと心で笑い、鞄を肩にかけなおした。
「もうお前は俺に頼み事は出来ないってことだな。まっ、授業のノートと代弁くらいなら頼まれてもいいけどね。」
里見は勝利を噛み締めながら、楷の肩を叩いて通り過ぎた。
「マジか…電気屋さんも誘ったのに…」
ポツリと漏らした言葉に里見は耳がダンボになって振り返った。
「電気屋さん…?」
「うん。あの後、お詫びしに会社に行ったんだけど、雨宮さんも金田さんもいなくて…対応してくれた女の人がスゲェボインでさ!学祭にも来てた人だよ!話してるうちに連絡先交換してさ。んで、やり取りしてたんだけど、海に行くッていう話したら彼女も行きたいっていうから、学祭の時のメンバー連れてきて下さいよって誘ったんだよ。」
この時ばかりは楷のコミュ力に拍手を送りたくなった。
「お礼がしたいから、雨宮さんには必ず来てもらうよう伝えてるから、勝谷が来れば雨宮さんも楽しめると思うから。なっ?この通り、お願い!!」
顔の前で両手を合わせる楷に里見は顔がにやけないように顔を背けて、頭をかいた。
「しょ、しょうがねえな。」
楷をよしよししたくなった。
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