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人との繋がりなんて気薄なくらいが丁度いい。
その方が自分が傷つくなんて感情も浮かばないから。
「お疲れ様です。」
「お疲れ…。」
里見は小栗とは目を合わさないように挨拶を返した。
タイムカードを押すとギリギリの時間だった。
「あっ、あの….。」
呼ばれて里見は嫌な顔をしてしまった。
「何?もう出ないと。」
「すみません。何でもないです。」
シュンとする小栗が里見を追い越して、スタッフルームを出た。
「あっ、来た来た。勝谷くん、最近ギリだね。珍しい。」
レジカウンターに入ると煙草の補充をしていた店長が、待ってましたという顔をして振り向いた。
「すみません。ちょっと話してたら友達と長くなっちゃって。」
「ほぅ〜”友達”ってのはこれもかな?」
店長が数通の封筒を里見に渡してきた。
「…。」
「お店に来るお客さんから。遊んだけどアドレス教えてくれなかったっていってる人もいるらしいよ。向こうから誘ってきた人ばかりって聞くけど、トラブルはやめてよ〜。」
里見は封筒を受け取った。
「すみません。あっ、店長、来月から俺のシフト減らしてもらってもいいですか?」
「どうした?いつもなら増やせっていうのに。」
「ちょっと付き合いが増えたんで…」
「ほぉっ〜〜ほっほほほほ。了解〜〜じゃあ、あとよろしく〜〜。お疲れ様〜〜。」
不審な笑いながら去っていく店長に里見は軽く口角を上げた。
「勝谷さん、シフト減らすんですか?」
話を聞いていた小栗が、眉をひそめて尋ねてきた。
「あぁ…近々、辞めようかと…。」
「なんで!?」
小栗が一歩近付いてきた。
里見は貰った封筒の束を横にして、真っ二つに破いた。
「勝谷さん…?」
「ここにいる理由ないから。」
里見は封筒をゴミ箱へ投げ入れた。
「そ…」
ピロピロピロ〜〜ン♪
「いらっしゃいませ、こんばんは。」
「あっ、いらっしゃいませ…」
2人は入店音とともに何となく離れた。
里見は煙草の補充を引き継いでやろうとカートンを掴んだ。
「勝谷く〜〜ん。」
甘ったるい声が自分の名前を呼び、里見は顔を上げた。
見ると完璧に巻かれた髪に完璧な化粧。寒くなったというのに胸元の開いた服を着た女性が立っていた。
「…いらっしゃいませ?」
「やだ〜〜今日出番だったの?ラッキ〜〜。」
喋る度に揺れる彼女は何処かで寝た覚えはあるが、名前は思い出せない。
というか名前なんて聞いただろうか?
しかし、里見は分からないという顔をしないようににこりと笑った。
「ラッキー?」
「ねぇ、終わったら、またお茶でしない?」
女性は甘い香りをさせながら、カウンター越しに身を乗り出してきた。
「…いいけど、今入ったから4時間くらいかかるよ?」
ピロピロピロ〜〜ン♪
丁度、客が入って来て、里見は自動ドアの方に目をやった。
「あっ、全然大丈夫!また来るわ。」
女性は興奮したように何度も手を振って、店を出て行った。
里見は何事も無かったように再びカートンを手にした。
店はそこまで忙しくなく、真夜中になると有線の音だけが店内を流れていた。
里見は時計を見て、レジスターの横のコインケースに手をかけた。
「あ、あの…勝谷さん。。」
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