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窓と窓の距離
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窓の外からガタン、ゴソゴソと音が聞こえて来る。駿介が帰ってきた。俺は窓を開けて、駿介の窓をコンコンとノックした。駿介は一瞬怯えた目で俺を見たけど、無視せずにちゃんと窓開けてくれた。
「ちょっと話せない?」
そう言う俺に、駿介は数十センチの隙間を乗り越えて俺の部屋に入ってくる。いつ見てもすげえ。俺はいくら近かろうが怖くてできねぇよ。
俺は自分から駿介を呼んだのに、なかなか話し出せずにいる。窓から、夏の残り香のような生ぬるい風が入って来てる。もう9月も終わりだもんな。夏の思い出が頭を過って、寂しさが込み上げてくる。
駄目なやつだなぁ、俺。この歳になって自分にこんなに嫌気がさすとは思わなかったよ。でも、それじゃだめだって気づいただけ進歩だ。
「...なぁ、震えはもう大丈夫なの?」
「...あぁ、身体はどこも悪くねぇよ。」
駿介の目に嘘はなさそうだ。俺は心底ほっとした。なんかでっかい病気かなんかに駿介がかかってたらと思って、心配でたまんなかったよ。俺にとって駿介はこんなにもでっけぇ存在なんだ。今回で思い知らされた。
「...のこと、何も思い出さねぇか。」
あれ、駿介が俺になんか言ってる。ごめん、最初の方なんか聞こえなかった。
「...?」
「いや、いい。...お前昨日、山科と、」
来た。やっぱり見てたんだよな。キスされたのは、俺がふらふらしてた所為もあるけどな。
「あぁ。キス...」
「...したのか。」
「...うん。」
それは紛れもない事実だ。どっちからとかは、関係ない。でも、それは、って今から訳を説明しようって時に、肩に何かがぶつかる感触がして、俺の視界がぐらりと反転した。
なんだ、何が起こった?突然の事に頭がついてこない。背中に柔らかい感触。これは、布団だ。目の前には、駿介の顔。...俺、駿介にベッドに押し倒されてる?
「......!」
とっさに、やめろって声が出かかったけど、駿介の瞳を見たとき、その声は喉の奥で掻き消えてしまった。駿介があまりにも哀しい苦しい目で俺を見てたから。どうしたんだよ、なんか辛いことあるなら俺に言えよ。俺じゃ駿介を助けてやれないのか。
「...駿介っ。」
俺まで泣きそうになりながら駿介の名前を呼ぶ。頼むから、俺をそんな目で見つめないでくれ。
「...なんで山科なんだよ。山科だけにはっ...」
唐突に駿介の口から、絞り出されるように発せられた言葉は、またしても俺の頭をぐちゃぐちゃに混乱させた。
「どういう意味だよっ...」
山科がどうしたんだよ。山科がお前をそんな風にさせるのか?なんで、お前はいつも訳わかんねぇ事ばっかり言うんだ?頼む、頼むから、馬鹿な俺にもわかるように言ってくれないか...
肩に触れた駿介の手が熱い。いや、俺の肩が熱いのか。いつの間にか溢れてた涙が目尻を伝ってベッドに滴り落ちる。
駿介は、ぎゅっと目を瞑って、開けた時にはもう俺なんかを見てなかった。俊敏な身のこなしで、俺が何かを言う間もないまま、自分の部屋に戻って行ってしまった。
なんだよ。勝手に、帰んなよ。俺は開かないカーテンをじっと見つめたまま、虚ろな目でずーっと泣いていた。
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