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うん、でも大丈夫
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噂は怖い。
尾鰭がついてあることないこと、肥大化した嘘と曖昧が交差して、時に災いを呼ぶ。
つまり今の状況だ。うん、うん、分かっていたよ。人はさ、人の不幸がなによりもスキなんだよね。わかるよ、だって俺もそうだった。昔はね、昔は。
「あいつ、だよな。ホモの奴って」
「先生に手出したらしいぜ」
「しかもそれ、宮園だろ?やべーんじゃね」
「うっそ、…まじ、あいつホモだったの」
「らしいよ、関わりたくねーわ」
「気持ち悪、ひくわ」
「緒方ってさ、何考えてんのかわかんねーよな」
「ヘラヘラしてっし、怖」
「俺らのこともヤりて?って目でみてんのかもよ」
「やめろよー!鳥肌とまんね」
「でも宮園とデキてんだろ?」
「げー!まじ?俺宮園先生好きだったんだけど?!」
俺はどう思われてもいい。ほんとにどうだっていいんだ。なんだっていい。でも祐介くんに害をもたらすなら許さない。絶対に、許さないから。
「やーめろよ!お前ら!弘がそんな奴に見えんのー?なんでもかんでも噂信じ込んでんじゃねーっつの、なー!弘!」
ヒカルが俺の肩を組みながらいつものテンションで話しかけてきた。こいつに助けられる日がくるなんて、ちょっとホッとした。
「ほんと、もーぜーんぜん収集つかないからさ、ほっとこーかなって思って。」
「ギャハハハ!!ちゃーんと反論しねーからこーなるんだよ!弘には最近かんわいー彼女が出来たもんなー?」
「そうそう。ラブラブだからね、ほんと幸せだから噂なんてどうでもいいや」
周りに聞こえるようにすこし大きな声でヒカルと話す。ああ、ありがとうとヒカルにだけ聞こえるぐらいの小さな声で言ったら、ヒカルはいつものアホみたいな顔を家に忘れてきたのか、いつになく真剣な顔をして俺の目を見つめて、こそっと耳打ちをした。普段からそーしてりゃモテるだろうに、なんて思いながら神経を耳に集中させると、「 ちょっとついてきて」
とだけ言われた。なんだろ?
ヒカルに手を引かれて連れてこられたのは屋上だった。
「…弘、本当のこと話せよ」
「本当もなにも、ぜーんぶ嘘なんだけど?西川の言いがかりだよ、デマもいいとこさ」
「俺にまで嘘つく気か?……デキてんの?先生と」
「…うるさいなぁ、そんなわけないでしょって何回いえばわかるの。もーうんざり。」
わざとらしく首をふると、ヒカルは眉間にシワをよせたまま、ぎゅっと拳を握った。やめてよ、そんな顔しないでよ。俺が悪いこと、してるみたいでしょ。
そして、俺の世界は次にヒカルが発した言葉によって真っ黒に塗りつぶされた。
「…っ、弘。先生が、校長室に呼ばれてた。俺は体育の山田に弘みっけたら校長室に来るように言えって言われた。なあ、お前らどうすんだよ!」
ああ、とうとう来てしまったんだと。この日が。バレるの早かったな、あーあ。
「どうもこうも。誤解だし。誤解だよって言ってくる」
「本当だな?本当に誤解で、付き合ってないんだな?!まさか先生に無理やりヤられたとか、」
「あっは!なーにいってんのさ、全然違うよ。誤解誤解、
………俺が、先生を無理矢理犯したんだよね。」
ぎょ、とするヒカルに一歩近づいて、するり、とヒカルの頬を撫でる。ごめんね?
「ゲイなんだよね。ま、ヒカルも結構タイプだよ」
ごめんね、俺は嘘つきだからさ。
そんな怯えた目をしないで?
「あーあ!もっと上手くやりゃよかったなー!」
震える声を隠すように、立ちすくむヒカルに背を向けて伸びをした。そのまま屋上を出るために出口の方に向かうと、ヒカルが「まてよ」と言ったので、俺は振り向くことなく足を止めた。
「俺!…弘の味方すっから!」
バカな奴だな。ははは。
反応なんてできないまま、何も言わずに屋上を出た。その瞬間に涙が零れ落ちた。
君とサヨナラをもう一度。
ねぇ君は、やっぱり嘘つきな俺を許してくれますか。
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