アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お迎え。
-
実はあの間接キス以来、キヨを、避けてしまっている。
嫌いになったわけでは決してない。むしろその逆。
好きになりすぎて、どう接して良いのかがわからなくなった。
間接キスだけで、手が触れただけで、相手にこのドキドキが伝わってしまったらどうしよう。そればかり考えている、逡巡の差中なわけだ。
だってこんな恋、したことなかったから…
「あ、裕基くん、お昼一緒に…」
「ご、ごめん今日も他の奴らと約束してて…」
「そっか…」
キヨは断ると、あからさまに悲しそうな笑顔になる。
「うん、じゃあ、また。」
俺は最低だ。
いつもの笑顔が見たいと望んでいながら、その機会を減らしているのは俺自身なのだから。
それでもキヨが俺を誘ってくれることに、少し嬉しいとさえ思ってしまう。
それに、お昼はキヨ以外と食べたことが無い。だから一緒に食べる約束なんて本当は誰ともしていないわけで、でもああ言ってしまった以上は、キヨに1人で食べているところを見られてしまうと、中々まずいことになる。
会社の奴らは基本屋上で食べるだろうし、きっとキヨも可愛らしい感じの女子社員達に誘われて、今頃皆でお昼食べてるんだろうなあ…はあ…
お昼を会社では食べたくなくて、会社近くの定食屋に来た。
ここならキヨも来ないだろうと思って、キヨを避け始めてからここに通っている。
あ、エビフライ定食…うまそう…これにしよう。
「すいませーん。」
「はーい」
ニコニコしてるおばちゃんが注文を取りに来た。
「エビフライ定食ひとつお願いします」
「はい、ひとつね〜」
店内は昼時で、結構混んでいる。
良い雰囲気だし……いや、それよりキヨをどうするか…
「エビフライ定食お待たせしました〜」
「あ、どうも」
いただきます…うん、やっぱうまいな。
うまいけど、何かが足りない。
最近、1人で食べるお昼ご飯はすごく寂しいことに気がついた。
「いらっしゃいませ〜」
騒がしい店内に、また客が入ったらしい。でもそれは俺に関係ないはずなので、とりあえず食べる。
すると、何故か俺を覆い被せるように影ができた。驚いて顔を上げたら、そこには…
「やっと、見つけた。」
「キヨ…なんで……」
「流石に気になって。」
「え…?」
「だって裕基くん、誰かと約束してるとか言ってるけど、その誰かと話してるところとか見たことないし、いつも1人で出て行くし、会社中探しても居ないから。」
「探してたのか…?俺を?」
「うん、そろそろ寂しいんじゃないかと思って。」
「そ、そっか…」
いつも見透かされている気がする、だから気持ちもバレそうで怖い。
けどそれ以上に、今嬉しい、汗をかいて、会社中探してここまで来てくれて、見つけてくれて、俺をわかってくれて、そのことだけで、死ぬほど嬉しい。
「おれ何にしようかな…」
「………」
「裕基くん…?どうして泣いてるの…?」
キヨはひどく優しい口調で俺に訊いてきた。
「え…俺泣いて…?」
そんなつもりなかったのに…いつのまに…俺…そんなに寂しかったのかな…なんで来たんだよキヨ…
「よしよし…」
キヨが頭を撫でてくれた。
それがまた、たまらなく嬉しくて、胸がきゅうっと締め付けられて、すごくドキドキした。
「うぅ…ふっ…うぇ……」
俺はこんなところで子供みたいに泣いてしまって恥ずかしいなって思ってたけど、キヨが
「おれおっきいし、隠れて皆には見えないから、泣いても大丈夫。泣くってことは、恥ずかしいことなんかじゃないんだよ。」
とか言いやがるから、その優しさでどんどん泣けてきて、お昼休みが終わっても、キヨは俺に付き合ってくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 15